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 9月12日にテキサス州ヒューストンで開催された第3回民主党大統領候補討論会には10人の候補が出席した。今回の特徴は、①支持率の高いバイデン前副大統領、サンダース、ウォーレン両上院議員に発言機会が多く与えられたこと、②討論が過熱し、特にヘルスケア対策で候補者が二分されたこと、③人種差別の問題にも本格的に踏み込んだこと——の3つである。

 各候補者による健康保険の議論について語ると、サンダース上院議員が唱える「メディケアを全国民に」という言葉から、ウォーレン上院議員が対抗する目的で使い始めた「ヘルスケアを全国民に」というキーワードに使われる言葉が変化している。

第3回民主党大統領候補討論会では、バイデン氏(写真右)とサンダース氏(写真左)がヘルスケア問題を巡り激論を交わした(写真:ZUMA Press/アフロ)

 メディケアとは65歳以上の全ての米国人を対象とした公的医療保険であり、ヘルスケアは基本的に全米の誰もが加入できる民間健康保険である。政策論としては両者に大きな違いはないものの、ヘルスケアの方が現時点で利用している人数が多いため、こちらを改革のベースにするということらしい。

「国民皆保険」の背景にある米国の病理

 今回、バイデン前副大統領がサンダース上院議員に、「ヘルスケアの対象を全国民とした場合、予算をどうするのか」と質問したところから、健康保険に関する議論が大きく二つに分かれた。サンダース上院議員は段階的に導入すれば最終的に2兆ドルのコスト削減につながると主張しているが、下院共和党は33兆ドルのコスト増とみている。バイデン前副大統領やクロブシャー上院議員もこれに近い金額を予想しており、サンダース上院議員とバイデン前副大統領などでは大きな開きがある。「割れた家は立っていられない」とクロブシャー上院議員が批判するほど議論は白熱した。

 また、ウォーレン上院議員は、ヘルスケアを全国民に提供する場合の財源もさることながら、その前に医療費や医薬品など保険会社が保険を支払う際の問題を解決すべきだと主張している。筆者も米国で暮らし始めて久しいが、保険会社の支払時の問題は社会保障費の財源問題と同じくらい大きいと感じている。

 それでは、米国のヘルスケアにはどのような問題があるのだろうか。以下、民主党の大統領候補者を支援する人々、および共和党でこの問題に取り組んでいる人々から聞いた話を基に書いていこう。