BLMのルーツと目的を探ると

 BLMは全米で蜂起しているとの報道もあるが、ほとんどの暴動は北部で起こっている。南部ではジョージア州アトランタでたまに起こるのと、9月5日、6日の週末にケンタッキー州ルイビルで起きている程度である。そもそもBLMは北部中心の組織である。

 フロイド事件を機に突然、世界の注目を得たBLMは誰がリーダーで、何を目的とした集団なのだろうか。いま一つ明確ではない。以下はリベラルメディアなどの報道を簡単にまとめたものだ。なお、BLMのウェブサイトは、以下に記すようにBlack Visionから1900万ドル(約20億円)を受け取った後、非常に整備されて歴史なども掲載されるようになったが、内容が筆者の聞いたものとやや異なるので、こちらは参考程度にとどめた。

 BLMは7年前にロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークの3都市で生まれ、黒人の人権を守るための行動を開始した。一時は全米で40の組織ができ、Black Lives Matter Global Networkという組織も設立された。しかし、行動が過激だったこともあり、黒人の中高年層や白人の差別撤廃主義者からの理解を得られず、2017年にMe Too運動が始まると、徐々に注目度が下がっていったという。

 この間、2014年7月にはニューヨークでエリック・ガーナー氏が、同8月にはミズーリ州ファーガソンでマイケル・ブラウン氏が警官に殺された。その際にBLMの運動もそれなりに盛り上がったが長続きはしなかった。

 ちなみに、「I can't breathe」という言葉が有名になったのは、ガーナー氏が窒息死させられたときに発した言葉だからであり、これを契機にニューヨーク警察はカメラの携帯が義務付けられた。なお、全く批判は出なかったが、当時のオバマ大統領はほとんどこれらの問題に触れていない。

 また、この頃のBLMは正当な行動として全米黒人地位向上協会にも訴えて、「From Black Lives Matter to Black Liberation」と主張していた。なお、ピーク時のBLMは、その傘下に150以上の黒人組織を持っていた。

 以前のBLMは、フロイド事件以降のような過激な活動に特化していたわけではないようだ。黒人問題研究者の話を聞くと、「BLMは、かつてのBlack Pantherや現在のANTIFAとは異なる、黒人の人権獲得を実現する可能性のある組織だった」とのことだ。

 ただし、今回の問題発生の前に筆者がウォール・ストリート・ジャーナルの記者から聞いた話では、BLMを始めた3人はマルクス主義者で、目的の達成のための破壊活動を正当化するという発想があったという。何が真実かの判断は難しいが、ポートランドのリーダーである黒人女性、ニューヨークでインタビューに答えた黒人男性は、話している内容からすると、どちらも共産主義的な考えが背景にある雰囲気だったのは事実である。

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