トランプ大統領は9月1日、共和党大会中に起こった白人警官による黒人銃撃を機に暴動が続くウィスコンシン州ケノーシャを訪問した。ケノーシャには大統領訪問を知って州外からも人が集まっており、逮捕者は3日間で100人を超えている。

 同大統領は、訪問を歓迎しない知事と市長(どちらも民主党)を除き、多くの議員や警察関係者、暴動の被害にあった市民などと会議し、暴動対応で日夜を問わず働く警官他に100万ドル、被害を受けた中小企業の復興に400万ドル、ウィスコンシン州全体の復興に4200万ドルを支出すると語った。記者の質問にも答えた。

 一方、バイデン大統領候補は8月31日、ついに地下室を出てピッツバーグで演説した。ただし、記者の質問は受けず、翌日は再び沈黙した。演説では「暴動は抵抗ではなく許されない」として暴動者と平和的抵抗者を分けたが、その夜、暴徒は一段と過激化している。

 ケノーシャは、党大会で弱者への寄り添いを強調したトランプ大統領にとって有言実行の場で、同地への訪問によってバイデン候補とのスタンスの違いを示した。それは共和党大会から始まった大統領選挙戦の第2フェーズである。

 8月24~27日の4日間、共和党大会が行われた。民主党が新型コロナウイルスへの対応で党大会を約1カ月延ばしたので、民主党大会の翌週の開催となった。党大会は事前に綿密な準備を要するので、1週間で内容を大幅に変更できるものではないものの、初のバーチャル開催となった民主党大会の状況を観察できた共和党は、「Second Mover Advantage」を得ることができたと言えるだろう。

民主党大会との違いは何だったのか

 両党大会の最大の違いの1つは、共和党が大会初日の日中にプレ大会として大統領候補を決める各州代表者の指名イベントをやったことだ。大統領・副大統領の指名受諾はこのときに行われており、トランプ氏とペンス氏は2人とも初日にも演説をしている。また、2日目のメラニア・トランプ氏(ファーストレディー)、3日目のペンス副大統領、最終日のトランプ大統領など、鍵となる演説には聴衆を入れた。

 新型コロナウイルスへの対応として守り(感染防止)を重視した民主党に対して、「Withコロナ」時代の現実解を示した点が共和党大会の特徴だったと言える。

 8月25日公開の拙稿「バーチャルでの党大会開催だから垣間見えた民主党の真実」で挙げた、共和党大会で注意すべき6つのポイントについては以下の通りだった。

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この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。