(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 米国時間の8月27日午後3時、カマラ・ハリス民主党副大統領候補が突然演説を行った。共和党大会の最中に民主党の大統領候補や副大統領候補がテレビで演説をするのは珍しい。新型コロナウイルスで通常の選挙戦ができないので、ゲリラ戦を始めたということなのかもしれない。

 筆者は民主党関係者からの電話でこの演説を知り、早速テレビをつけて見た。8月23日にウィスコンシン州ケノーシャで起きた白人警官による黒人男性銃撃事件への怒りの表明の後、トランプ大統領が米国をコロナ禍に陥れたと批判した。

 ハリス氏は、新政権はマスクの装着義務を課すとも主張した。20日の大統領候補指名受諾演説でバイデン氏は、国民にマスクの装着を求めると言わず、批判を浴びた。その埋め合わせだと思われる。奇妙だったのは、黒人銃撃事件についての怒りのコメントとは裏腹にハリス氏が笑顔だったことだ。

 またハリス氏の演説と前後して、バイデン氏もトランプ大統領を批判するメッセージを出した。今回の突然の演説では、マスクの件以外にも、民主党陣営としての新たな意見の表明があった。ハリス副大統領候補の突然の演説の内容とその背景について考察する。

接戦州でバイデン氏のリード小さく

 なぜハリス氏はこのタイミングでバイデン大統領候補を差し置いて突然の演説をしたのだろうか。

 8月26日時点のペンシルベニア、フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、アリゾナといった接戦州(バトルグラウンドと呼ばれる)の支持率を見ると、バイデン氏のリードは1~6ポイントに縮まっている。ここまで来ると、トランプ陣営でなくても、2016年と同様、最後はトランプ氏が勝利する展開に入ったとの見方が可能となる。なお、28日にはミシガンでトランプ大統領が逆転した。

 特にウィスコンシン州では、2つの支持率調査のうちバイデン候補とトランプ大統領が勝利を分け合った。同州は、多くの黒人アスリートが試合をボイコットする原因となった白人警官による黒人銃撃事件が起きた場所だ。しかも、調査は事件の2日後だったにもかかわらずだ。

 これらの支持率調査の結果と26日のペンス副大統領の候補指名受諾演説を受け、米FOXニュースは26日深夜の番組で、潮目が変わったと報じている。

 8月27日には、ペンシルベニア州にあるフランクリン&マーシャル大学が、8月17~23日に調査したアンケートの分析結果を発表した。この中で、民主党議員の民主党大会視聴率が60%、リベラル派の視聴率が58%とどちらも芳しくなく、35歳未満の視聴率は26%と非常に低かったことが分かった。

 しかも、共和党と全面的に対立している全選挙登録者の郵便投票について、どの年齢層もかなりの差で郵便ではなく投票所での投票を求めていることが分かった。民主党員だけに絞っても52対42と、郵便投票への支持は10ポイント上回るにとどまる。

 民主党が議会で共和党とバトルしている全投票者への郵便投票は、有権者に受け入れられていないということになる。今回はペンシルベニア州で勝てると考えてきた民主党は、危機感を抱いただろう。

 なお、フランクリン&マーシャル大学は、ペンシルベニア州にある単科大学である。日本人にはあまり知られていないと思うが、日本の元国会議員も教員をしたことがあり、表参道にはここのロゴを入れたTシャツなどを売る店もある有名大学だ。

 支持率調査などを集計・分析しているリアルクリアポリティクスは、この発表が8月27日だったことを受けて、調査結果にあるバイデン氏の7ポイントのリードを27日の調査として掲載しているが、これは誤りだ。この調査の期間は17~23日なので、直近の調査結果は8月26日時点となり、ペンシルベニア州でのバイデン氏のリードは3ポイントに縮まっている。

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