(写真:AFP/アフロ)
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 8月11日夕刻、米民主党・バイデン氏の選挙対策本部は公約の期限(8月8日)より3日遅れで副大統領候補を発表した。スーザン・ライス元国家安全保障担当大統領補佐官とカマラ・ハリス上院議員の2人に絞られたと報道されてから2日。最終的には民主党の大統領予備選にも出馬したハリス上院議員が選ばれた。

 メディアなどへのリークを恐れた選挙本部の入念な準備により、2人がそろって記者会見したのは翌8月12日の午後4時半過ぎだった。民主党関係者から午後2時前になると聞いていたので、お披露目が3時間近く遅れたことになる。

 コロナ禍で従来の選挙スケジュールは大幅に変更になっているが、本来であれば8月17日から4日間の予定で準備されているウィスコンシン州ミルウォーキーでの党大会において、2人が大統領選に臨むことを宣言し、大会2日目に副大統領候補がスピーチするのが一般的だ。しかし、今回は党大会自体がテレビ放映だけの予定なので、全米の注目は12日の2人の会見に集まった。

 2人のスピーチ内容には特筆すべきものはなかったと思う。むしろ、注目すべきは8月16日に予定されている米FOXニュースでのハリス氏の単独インタビューだろう。ハリス氏は大統領予備選中、一度もFOXに出なかったが、6月からは同チャンネルが地上波も抑えて視聴率トップを続けているため、このイベントが彼女にとっての最初の鍵となる。

 8月11日公開の拙稿「米大統領選、郵便による投票はバイデン優位を変えるか」で触れたように、各選挙民の判断が実際の選挙日より前に設定された郵便投票の投函(とうかん)日まで早まることを前提に、ディベートを早めることについての議論も再燃するかもしれない。トランプ大統領の選挙本部と共和党は、全州民の郵便投票を可能とした州の中で勝算の最も高いネバダ州との訴訟を続けている。

 こうした中で、ディベートの前倒しに反対する民主党は、55歳と若いハリス氏がディベートを2回行うこと(つまり大統領候補が3回、副大統領候補が2回とする)を逆提案する声もわずかだが聞こえてきた。

 本稿では、バイデン候補にとってハリス氏の選択が吉と出るのかどうか、5つの視点から考えてみたい。

1.女性としても有色人種としても2人目となる候補

 ハリス氏は、女性の副大統領候補という意味では、1984年のモンデール民主党候補と組んだフェラーロ氏以来だ。有色人種という意味では、オバマ大統領が2008年の大統領選に勝ったので、「大統領・副大統領」という観点では2人目である。

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この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。