(写真:AP/アフロ)
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 投票日まで3カ月を切った米大統領選。7月には楽勝ムードに入りつつあったバイデン陣営が、8月に入って焦りを見せ始めている。トランプ大統領とバイデン候補の両陣営の争いは、政策などの戦略的なものから1票を巡る戦術的なものに戦いの場を移している。ここでトランプ陣営が巻き返しに出ているのだ。

 7月までのバイデン候補優勢の背景には、民主党がトランプ政権の新型コロナウイルスへの初期対応を問題視したことがある。共和党が新型コロナを中国ウイルス(または武漢ウイルス)と呼んだことに対し、民主党のペロシ下院議長が「トランプウイルスだ」と修正したことは、批判を招きつつも一時的に国民の支持を得た。

 また、経済を再開するかどうかでは、共和党の首長が再開を急いだ一方、民主党陣営は慎重姿勢を崩さなかった。その後、感染者数の増加が再び加速したことから、これも民主党に軍配が上がった感じだった。

 ところが肝心のバイデン候補がこの勢いに乗って攻めに出なかった。77歳という高齢を意識してかデラウェア州の自宅に籠もり、そこからのメッセージ発信に終始したため、能動的に動いたトランプ大統領との差が出て、徐々に勢いが薄れてきたのである。

 同時に、保守系メディアのFOXニュースが、バイデン氏の認知機能低下への疑問や、足元がふらつく映像を流す時間を増やし、同氏が激務の大統領職をこなせるのかとの疑問を視聴者にぶつけた。8月3日にはバイデン候補が9月のディベートを中止したいと発言したとの噂が流れ、この報道を裏付ける結果となってしまった。

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この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。