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アメリカ・ファーストの歴史的な背景

 実は、アメリカ・ファーストはトランプ大統領が作った言葉ではない。

 アメリカ・ファーストは、1940年に米国の議会にできたアメリカ・ファースト委員会(AFC)が始まりである。当時は、欧州の戦争に介入したいフランクリン・ルーズベルト大統領を抑え、米国を戦争から隔離することを最優先としていた。昨年公開された『ウィンストン・チャーチル』という映画の中で同大統領が「議会が反対するからこれ以上の支援は無理だ」とチャーチル首相に語った背景にあったのが、AFCの動向である。

 AFCは3000万人ほどの参加者がいたとの説もあり、強力な組織をバックにしていたようだ。そこには米国は戦争をせずに自国の経済を考えていれば繁栄を続けられるという見方もあったらしい。

 ちなみに、このAFCのルーズベルト大統領に対する働きかけは、1941年12月8日に日本が真珠湾を奇襲し、その3日後に日独伊・三国軍事同盟を結ぶドイツが米国に宣戦布告したことで主な活動を終了せざるを得なくなった。

 現在のトランプ大統領も、戦争をするぞとイランや北朝鮮を脅し、シリアに対しては空爆も実施した。しかし、今のところ実際の戦争はしておらず、むしろ多くのメディアや専門家が指摘するように、何もかもが経済的利益で判断しているところがある。

 今後の国際情勢を考えると、極東に位置する日本としては、米朝関係の進展を意識して同盟国アメリカとの共通の防衛線が朝鮮半島の38度線から釜山まで接近する可能性を考える必要も出てくるかもしれない。

 中国とて、日本と経済面での交流を深めようとしてはいるものの、昨年からの景気減速と米中貿易摩擦、ここ数カ月の習近平政権の内政への気の配り方を見ると、チャイナ・ファーストになることを否定できない。

 こういう場合、「国際貢献」「国際世論」「政権の浮揚にとらわれず」などと聞こえの良い表現を使って、「日本は世界平和や世界の人々を考えるという正論を忘れるな」という論ががよく語られる。確かにそれは大切で、どの国もそう考えているだろう。

 しかし、実際には国際貢献というものは存在せず、どこか特定の国や地域への貢献である。また、国際世論も存在せず、どこか特定の国の世論があるだけだ。これらは時として似たような方向に向かうこともあるが、それは各国の利益が少なくともある程度は一致する方向に働く場合のみだ。

 その前に自国民のことを考えるという基本は古今東西変わっていない。それが極端なのがアメリカ・ファーストに代表されるポピュリズムである。その世界の中で生きていく以上、日本も、真の繁栄は相互依存関係の中に存在するという考えを大前提としながらも、まずは自国民の繁栄を第一に考えるという、民主主義政治の基本も忘れるべきではない。