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 こうした観点からすると、安倍政権の打倒を目指すということは、今の好調なマクロ景気を破壊することにつながる。当事者はこれこそが構造改革の第一歩というかもしれないが、実のところ、それは国民が喜ぶものとは言い難いのではないだろうか。

 インバウンド消費を続けるためには、現在のような円安水準での為替相場が一つの鍵で、そこにはアベノミクスが重要な役割を果たしていることを忘れてはならない。その先鋒(先鋒)である黒田日銀を、安易に失敗を続ける組織と批判するのも的を射てはいない。

注意すべきはトランプ政権のさらなる要求

 ただ、選挙直前に話題となった老後資金2000万円問題や、社会的弱者に対する問題など、福祉政策について解決すべき問題があるのも事実だ。恐らく、今のアベノミクスで最初に手を付けるべきは、この福祉に絡む構造を改革することであろう。

 介護施設や福祉施設での高齢者や障害者へのいじめ、児童福祉施設などでの子供に対する虐待のように、厳しいルールを作るなどして早期に対応できる問題は少なくない。また、ベーシックインカム(最低所得保障)や最低賃金の引き上げといった格差対策についても、冷静に財政支出を見回せば、その財源のためにカットできるものがあるはずだ。

 つまり、今の日本はマクロ全体で見れば経済は良好な部類にあるが、福祉というミクロの話まで含めると問題があり、これを解決するためにはお金を循環させるような政策が必要だ。

 もっとも、米国も日本と同様に株価の上昇やマクロ景気の好調さとは裏腹に、その恩恵にあずかれない人々が増えている。その期待を背負って登場したトランプ大統領は、日本の状況を理解したとしても、自国民のための政策を推進するであろう。日本による武器や農産物のさらなる購入増、また日本からの輸入品に対する関税引き上げなど、ハードな交渉は目前にある。

 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)直前に日米安保を廃止することをつぶやいたツイッターなどは、日本への揺さぶりと見てもいいだろう。

 従って、日本は今後、米国の貿易赤字解消策への協力を求める強いプレッシャーをトランプ政権から受けるであろう。間違っても、理屈は日本が正しいという発想で、安易に相手を怒らせて円高を招くような愚を演じてはならない。それは、自分で自分の首を絞めるのに等しい自殺行為だからだ。