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 特に、若者の与党への投票率が高かったのは、足元の好調な雇用状況の維持と、現在のツケを将来に回さないことへの支持と見る。つまり、海外の人間は日本国の若者は勤勉性などが従来よりも低下したという過去との比較ではなく、G7(主要7カ国)諸国やギリシャなどの若者と比べればはるかに現実的だという海外との比較で考えている。

 仮に、この2年間にワシントンで安倍政権の経済運営に対して批判的な話を聞いた日本人がいるとしたら、それはトランプ政権やマクロ経済学者の本音ではなく、その人たちの反応を見るために、彼らがあえて他の日本人から聞いた話を鏡のように反射させた結果だと考えた方が良い。

アベノミクスを馬鹿にしない海外の政策立案者

 以前、スティーブン・バノン元主席戦略官が「アメリカ・ファースト」は日本からヒントを得たものだと話したことがある。それは、安倍政権が日本の有権者を最優先する政策で円安に導き、株価の引き上げなどにより人気を得てきたことを意味していた。

 実際、アベノミクスで始まった大胆な金融緩和と柔軟な財政出動によって、民主党政権時代の1ドル=80円程度と比べて110円~120円程度の大幅な円安水準を実現させた。輸出産業を中心とした日本企業の収益が拡大を続けるのに伴って、税収は増加、雇用も改善した。

 このアベノミクス景気の一つの柱となったインバウンド消費は、訪日外国人数が2012年の約800万人から、2018年には約3100万人と急増したことを背景としている。これも円安のおかげで、仮に2011年ごろのように80円台の円高に戻れば急速にしぼんでしまうだろう。

 経済評論家の中には、アベノミクスを構成する3本の矢のうちの3本目である構造改革が実現していないと低評価する声が少なくない。だが、諸外国の政策立案者やその経験者からすれば、構造改革に踏み切れない問題はあるとしても、それを織り込みつつ景気を浮揚させることの難しさに注目している。

 正確な表現で言えば、インバウンド消費の拡大は、貿易立国を推し進めるために観光資源を犠牲にしてきた日本の経済構造を大幅に変更させたと言える。アベノミクスは日本人のデフレマインドを変えることはできていないが、活況な不動産投資を見ても分かるように、カネもうけに対する人々の考え方を変えたと見ることが可能だ。

 ちなみに、日本を投資対象とする人々は投資収益の拡大の背景にある(現時点で試算できる)日本の将来の成長性を考える。これは政策立案者が景気拡大のために何をするかを考えるのと類似している。

 それを6年半も続けてきた安倍政権に対する評価が、低すぎると感じている。