(写真:共同通信)
(写真:共同通信)

 トランプ大統領の強みが米経済の好調さにあるのは誰もが周知のことだ。現在、米中貿易摩擦の行方が不透明で、「来年の大統領選挙まで中国が結論を出さないかもしれない」とやや弱気なところを見せた同大統領の最大の期待国は日本である。

 安倍晋三首相はトランプ大統領と最も関係の良い外国の首脳である。大統領選後に最初に面会した首脳であり、その後も、日米両国で会談とゴルフを繰り返してきた。また、F35戦闘機や地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を最近購入したように、日本は米国製の武器を最も多く購入する同盟国の一つでもある。

 トランプ政権が安倍ジャパンに期待するのは、安倍政権の始まった2012年12月以降の日本経済が好調だとの見方に基づく。

米国が日本経済を好調と見る背景

 近年、日本の評価に対して内外で意見が最も異なるところは、日本経済が良いかどうか、ということではないだろうか。

 日本の実質GDP成長率は7月29日に政府が見通しを下げたものの1%程度を維持している。アベノミクスで2013年から始まった円安は輸出関連の多い日本の企業業績を引き上げ、雇用も全体として人手不足が問題となるほどの状態にある。特に、インバウンド消費は東京や京都などの観光都市から地方の観光名所に波及してきており、日本全体の景気の底上げに貢献している。

 トランプ政権のみならず、海外のどの国も日本が良好な経済状況だと感じている。だからこそ、自民党・公明党の与党が衆参6回の選挙に勝ち続けることができたと考えている。今回の参院議員選挙も、日本を真剣に投資対象と見ている海外ファンドや、トランプ政権に近い人々は、与党議員の総数としては改選前より減少したものの、前回の圧勝を前提とすれば今も十分国民の支持を受けているとして安倍政権の力に陰りはないとの分析をしている。

 ところが、日本国内におけるメディアや政治・経済の専門家の論調はこれとは異なっており、例えば、実質GDPが下がる中での消費増税の悪影響を指摘するなど安倍政権の経済運営を批判した。今回の選挙結果についても、憲法改正に必要な全議席の3分の2を与党に与えなかった、という曖昧な評価を下している。

 だが、日本を投資やビジネスの相手先と見る立場からすれば、消費増税に反対と叫ぶ一方で消費増税凍結法案を出さない野党よりも、現実の経済運営と将来の国家債務問題に取り組む安倍政権の方がはるかにリーズナブルな政治家だと映る。MMT(現代貨幣理論)の実験国と揶揄(やゆ)されながら、増税を3年前の約束通り実施しようとしてもいる。

 憲法改正について言えば、野党からの賛成者を得れば実現するかもしれない6議席程度の不足を重要視することはなく、北朝鮮問題などを背景にむしろ国民は視野に入れたと考える(本当に多くの国民が改正反対ならもっと野党に勝たせたはずだ)。

次ページ アベノミクスを馬鹿にしない海外の政策立案者