(写真:AP/アフロ)

コロナ直前のニューヨーク州の医療体制は全米で最低

 2019年12月、「コード・ブルー:ニューヨークの病院による不十分な質の取り扱い」というリポートが公表された。全米レベルのリポートは1999年から10年ごとに公表されている。2013年には「病院にかかっている患者のうち40万人の死は回避可能だった」との衝撃的なリポートも発表されているが、ニューヨーク州を細かく分析したものはこれが初めてだった。

 「コード・ブルー」には、ニューヨーク州の病院がいかに劣悪かが記されている。例えば、米国人が医者を選ぶ際の参考のためとして、ホテルのような5段階評価(5つ星が最高)が病院にも付けられている。同州の場合、5つ星は病院全体の1%、4つ星が8%しかなく、星が減るにしたがって割合が増え、1つ星は34%と最も比率が高い。

 これに対して、カリフォルニア州は5つ星が7%あり、4つ星が21%、3ツ星・2つ星が30%強で、1つ星は9%と、ニューヨーク州よりはるかによいバランスだ。ニューヨーク州に医師や看護師の応援を出したオハイオ州では、5つ星病院が15%、4つ星病院が35%を占める。

 なお、大都市を抱える16州で5つ星が1%なのはニューヨーク州だけ。4つ星の比率が1桁なのもニューヨーク州だけである。

 理由としては、前編に書いたような医療コストの削減の過程で起こったモラルダウンなど様々なことが考えられる。しかし、「コード・ブルー」は同州の病院が全米で最低な理由として、州の健康局がニューヨーク公共健康法の12条に基づいて、患者に犠牲を強いるような劣悪な対応をした病院に罰金を科すことが少ないからだと結論付けている。同州の劣悪な医療サービスの原因は、コンプライアンス管理の問題だと指摘しているのだ。

 この実態を2015年12月から2018年11月までについて具体的に見てみると、2016年は9病院が計5万6000ドルの罰金を支払っている。2017年は10病院で計4万8000ドル、2018年は1病院で1万4000ドルとなっている。しかも発表されているのは合計の病院数と金額のみで、罰金が科された具体的な理由や健康局の指導内容なども公表されていない。

 カリフォルニア州について同様のデータを見てみると、2017年に53病院が罰金を科されていることが分かる。各病院の罰金額についてもアルファベット順で公表されており、罰金となった事案や指導の内容もウェブで見られるようになっている。

 つまり、コロナ禍直前まで、ニューヨーク州は医療サービスの向上に全く留意してこなかったのだ。

 最大の問題は、クオモ知事がこうしたニューヨーク州の劣悪な医療サービス体制を放置していたことである。同知事は今でこそ、毎日の記者会見で新型コロナ感染者数などを発表するとともに、11万台のベッドが必要であることや中国からの2万台の人工呼吸器の寄付へのお礼など、具体的な説明で「戦う知事」を世界に見せつけて人気を博している。

オバマケアとクオモ知事の奇策が招いた医療サービスのさらなる劣化

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