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 トランプ外交で最も注目が集まっている地域は北東アジアである。そこには、日本、中国、台湾、北朝鮮、韓国、モンゴルがある。ロシアもウラジオストクをはじめ極東に主要都市を持つ。日台ロは2016年の大統領選直後から安全保障上の焦点になった。中国と北朝鮮はトランプ政権内でイランとともに今最もホットな話題だ。

 我々は米中貿易摩擦と北朝鮮の核廃棄問題に目が奪われがちだが、極東の情勢は刻一刻と変化している。特に中朝を交えた話題は、我々に地政学の重要性を再認識させる。一方、トランプ嫌いのメディアや専門家による報道や論説が多いため、それに伴う誤解も生じやすい。

 北東アジアについては、特に日本では今後も話題の中心になるので、トランプ政権が考える、また反トランプ陣営も見ている極東のイメージを、ここで一度、整理しておきたい。

金正恩・朝鮮労働党委員長との首脳会談のため南北国境を越えたトランプ大統領(写真:Handout / Getty Images)

電撃的な米朝板門店サミットの舞台裏

 2019年2月の米朝ハノイサミットの後、6月末の板門店サミットまで、6カ国協議参加国のうち韓国を除く5カ国(日中ロ米朝)は首脳同士を含めた会合を続けてきた。ただ、韓国は4月に米韓首脳会談こそあったが「単独会談は2分だけ」(韓国メディア)と報じられるなど、一連の動きからやや距離がある。

 6月28、29日のG20大阪サミットに臨んだトランプ大統領は、29日にツイッターで金正恩・朝鮮労働党委員長に板門店での会談を呼びかけ、翌30日午後には南北軍事境界線を挟んで握手し、北朝鮮側に入った。米国大統領として初めて北朝鮮の領土に足を踏み入れたのだ。その後、韓国側の「自由の家」で文在寅大統領同席のもと、約50分の米朝首脳会談を実施、数週間のうちに事務方の協議が再開されると発表した。

 トランプ大統領のツイッター戦術は現代の新しい政治や外交手法となり、世界の首脳が取り入れている。今回も事務方や専門家といわれる人々が準備を積み上げる従来型の経路を飛ばした。外交交渉のための兵たんの常識を変えたと言っていいだろう。

 ただ、これには伏線がある。