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(写真:AP/アフロ)

ニューヨークの感染爆発は検査急増の結果なのか

 ニューヨークは、全米で最も深刻な新型コロナウイルスの感染爆発が続いている州である。7月5日までの総感染者数42万2000人は全米(298万3000人)の14%を占め、今も症状が出ている人数は27万4000人と全米の18%だ。死者数の3万2248人に至っては全米の24%を占める。

 しかも、回復者数の11万5000人は総感染者数の27%にすぎず、全米の43%(298万3000人のうち128万9000人が回復)を大きく下回っている。

 ニューヨークの場合、1日当たりのPCR検査数を、3月の本格開始後に5000件→1万件→2万件→4万件と引き上げてきており、6月以降は基本的に6万5000件前後の検査を続けてきた。この積極的な「州民皆検査」方針への取り組みが全米最多の感染者数の原因だといわれている。実際、同州の総検査数は423万3000件と人口(840万人)の半分を超えた。

 一度はピークアウトしたかに見えた1日当たりの感染者数も再び増加に転じて、7月3日にピークを更新した後も横ばいで推移している。このため、クオモ知事も、ニューヨークの完全な経済活動再開をちゅうちょしており、マスクの装着を求め、不装着の場合には罰金を科すとまで宣言した。

 ここで「ニューヨークは検査数が多いから感染者数も増えている」という指摘を吟味すると、7月5日の入院患者数が6月26日に1000人を切った(996人)後も減少していることに加え、1日当たりの感染率が0.84%と5月の半分以下になっていることもあって、同州の新型コロナ禍自体は落ち着きつつあるという雰囲気を感じないでもない。

 この間、セントラルパークに医療用テントを張り、ハドソン川にはチャーターした軍の病院船を停泊させたほか、他州から医師や看護師の応援を受けて、崩壊寸前という印象だった医療態勢については、全体として落ち着きを取り戻している印象がある。

ドーナツ状に広がるニューヨークの感染爆発地域

 ニューヨーク州の人口の大半を占め、感染者数もずぬけて多いニューヨーク市の感染者分布状況を、郵便番号を使った地区別の感染者数と死者数で見ると、世界でセンセーショナルに報道されたタイムズスクエアやウォールストリートのようなマンハッタン中心部では少なく、いずれも中心部から遠いマンハッタン以外の4地区(クイーンズ、ブルックリン、スタテンアイランド、ブロンクス)で多いことが分かる。

 しかも、この状況は感染者数が増え続ける過程で一段と明確になっており、現在の黒人暴動の一因とも言える。これらの地区は、貧困層が多い地域なのだ。

 なお、マンハッタン中心部で感染者数が多い地区を見ると、例えばメトロポリタン美術館周辺など中国からの観光客が3月まで押し寄せていた場所であることが分かる。

・ニューヨーク市の郵便番号別コロナ感染者数
・ニューヨーク市の郵便番号別コロナによる死者数

 このような状況であるにもかかわらず、ニューヨーク州は、マンハッタン以外の4地区ではなく、マンハッタン中央にあるセントラルパークに新型コロナ患者を収容するテントを張り、米軍からの病院船もロウアーマンハッタンの北西部のハドソン川沿いに停泊させた。

 念のために地理的なイメージを書いておくと、ブロンクスはマンハッタンの北、クイーンズとブロンクスは東、スタテンアイランドは南である。つまり、緊急対応をした2つの場所は真の感染爆発地域からは決して近くなく、これら地域からの移送を意識したものとは言いがたい。

 一方、ニューヨーク州は、感染者数が比較的少ない州から医師や看護師の応援を要請したが、彼らの支援病院は感染者数の多いクイーンズやブルックリンにあった。中にはハドソン川の対岸にあるニュージャージー州の病院も含まれていた。しかも、彼らがメディアのインタビューに応じて、自分の支援する医療現場の超繁忙状態を語ったことから、ニューヨーク市では医療テントや病院船の存在と重なって、明日にでもマンハッタンで医療崩壊が起こるような、暗たんたるイメージの報道につながったように感じる。特に、地元の実態を知らない海外メディアの報道はかなり極端だった。このため、こうした報道に触れた世界の多くの人は、ニューヨークの感染爆発はマンハッタンで起きており、マンハッタンが医療崩壊すると思ってきたはずだ。