まず、実現可能な政策立案について。「オバマケアは財政負担や強制的に加入させられた米国民の負担を考えれば現実的ではない」というのがトランプ政権の意見であり、同政策の廃止を進める理由だ。しかし、必要な時に適切な医療行為を受けられる仕組みを人々が求めているのも確か。それゆえに、トランプ大統領も対案は考えていると言い続けてきた。サンダース上院議員をはじめとした左派はこれを国民皆保険にすると主張している。

 ここまでなら、日本でも与党以外の議員が提案している発想(つまり国民にプラスの政策<例えば減税>を取り入れる)と似ている。違いは財源を示して現実のものとする道筋まで考えている点だ。

政策論は地に足のついた財源確保が前提

 サンダース上院議員は、目的税の導入(実質増税)と保険会社に対する保険料支払いの廃止を同時に実施し、国民の負担を相殺すると提案している。実際、米国で日本の公的医療保険と同程度の効果を得るためには年2万4000ドル程度の保険料支払いが必要だと思われる。現在の民間保険加入者数と全国民との人数差などを考慮すれば、歯科を含めないなど保険適用範囲は最小限に近くなるとしても、全国民に対して、個人に対する負担を変えずに、公的に皆保険を実現することは不可能ではないようだ。

 同じ民主党左派のウォーレン上院議員なども医療保険会社や製薬会社の過剰利益を批判している。これらを合わせれば、恐らく、国民皆保険が夢物語ではなくなる可能性もある。

 こういった政策は社会主義的ではあるものの実現可能な議論であり、国民皆保険が実現可能性を帯びているため投票者に評価されているのだ。ハリス上院議員が主張している中間層向け減税の導入も富裕層増税が主な原資で同じ発想である。

 前稿の繰り返しになるが、今回の討論会では、MMT(現代貨幣理論)を導入すれば米国は債務をもっと増やせるという、国民に将来の返済不安を抱かせるような主張はなく、基本的に地に足のついた財源確保を前提とした議論となっていた。

 一方、大学の無償化については、大学に行かない人を考えたシステムを作るべきだとのブティジェッジ・インディアナ州サウスベンド市長の意見もあり、利益受給者の対象を踏まえた政策を考えるべきだという流れが生まれている。

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