DNCでは、現在のような候補者の乱立を予想して、政策とは関係のないところに焦点が当たるのを避け、トランプ政権に対する政策をぶつける形になるべく早く持っていきたいという意向があるようだ。

中間選挙で注目を浴びたオルーク候補

 もっとも、現段階で全ての領域で明確な政策案を表明しているのは、バイデン前副大統領、サンダース上院議員、ウォーレン上院議員の3人だけと言っても過言ではない。討論会は彼らの政策案を題材として展開される可能性がある。

 一方、選挙戦略は候補者によってまちまちで、誰もがテレビコマーシャルやSNSを使うとは限らない。例えば、中間選挙での草の根戦術が奏功し、一躍全米の注目を浴びたオルーク前下院議員(テキサス)は、今回も既に18州を訪れて有権者と直に話す戦術に出ている。

 ただ、オルーク支持者には自ら同性愛者であることを告白したブティジェッジ・サウスベンド市長を支援する人々も少なくない。ハリス上院議員やデブラシオ・ニューヨーク市長、作家のウィリアムソン氏や起業家のヤン氏など、政策もさることながら、人となりや経験、知識に基づく未知数の爆発力に注目が集まり、人気を高めている候補者がいるのも事実である。

 既に公表されている両日の討論会を想定すると(本校末尾に参加者リストを掲載)、メンバーの中に注目候補が少ない26日はウォーレン上院議員が目立つ可能性がある。27日はバイデン前副大統領とサンダース上院議員に質問が集中し、両候補の一騎打ちになるような場面もあるだろう。つまり全候補者のための討論会という立て付けだが、討論会を2日に分けたことで、早くから準備し、かつ知名度の高い候補者にスポットライトを当ててしまうという懸念がある。

 現に、この3人に加えて、オルーク前下院議員、ハリス上院議員の5人だけにスポットライトが当たるとの批判をするメディアが少なくない。結果として、国民が期待するような政策論よりも顔見せショーになりかねない。6月28日にG20大阪サミットが始まるというタイミングを考えると、それなりの結果を見せないと、トランプ大統領からバカにされることも十分にあるだろう。

トランプ政権の政策と大差ない民主党候補者

 民主党の悩みの1つは、トランプ大統領の売りである「アメリカ・ファースト」の外交政策に対して、「世界に混乱を与えている」とは批判してきたものの、明確な対立軸を持つ候補者があまりいないことである。

 軍事面まで含めて「トランプ・ドクトリン」と位置付ける専門家も出てきてはいるものの、トランプ大統領の外交政策はその場に応じた対応で成功してきたとする(同政権は決して失敗という言葉は使わない)現政権に対して、対立案を主張するのは難しい。特に、バイデン候補はブッシュ政権時のアフガニスタン攻撃やイラク攻撃に賛成票を投じたこともあり、一見正反対ながら実は似ている面がある。

 他の候補者を見ても、部分的ではあるがトランプ大統領の政策を支持する候補者もおり、差別化ではなく同化してしまうリスクがある。オバマ時代の政策の復活についても「過去への回帰」と批判し合っている状況だ。

 唯一、サンダース候補だけが独自の外交戦略を打ち出してはいるが、彼の政策案の中で外交政策の具体性は薄く、評価するにはまだ早い。加えて、対中政策ではバイデン候補を除けば、みな強硬路線に賛成している雰囲気がある。外交問題で最大の争点となる中国との関係において、トランプ大統領との差別化にはならない。

討論会からFOXニュースを排除した意味

 さらに、今回は立候補していないが、国民の注目を集めるコルテス下院議員がバノン前大統領補佐官と対中政策で一致したとの噂が出ており、民主党としては現段階でこの議論を避けたいところだ。

 イスラエルへの偏った外交政策についても、ヒラリー候補が2008年の予備選でオバマ大統領と接戦を繰り広げた際に、「親イスラム」というレッテルが貼られかけて苦心した経験があり、現段階では触れたくない話題である。

 実際の討論会では、モデレーター(テレビ局の司会者などが担う)が議論を誘導していくわけだが、最初の段階での致命的なミスを避けたいのがDNCの思いだろう。こうした理由もあって、今回の12回の討論会には共和党系のFOXニュースを招いていない。

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