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トランプ政権のグローバル戦略5分類

 トランプ政権のグローバル戦略を見る時は、世界を、①中国とその周辺のアジア諸国(海洋面ではアジア・太平洋地域)、②南北アメリカ大陸、③欧州、④中東、⑤アフリカの5つに分けると理解しやすい。

 ①は、既に世界の最注目課題となっているように、貿易不均衡の是正、ファーウェイを巡る5G(次世代通信規格)の覇権争いなど経済戦争に突入している。特に5Gは、米軍の通信系統や無人機などを活用する際のAI(人工知能)戦術の際の計算速度の超高速化やサイバー攻撃にも転用されるとされ、米国は一歩も譲らない構えを見せている。

 ②は、ベネズエラやキューバなどの問題だけでなく、不法移民の出身国に対する扱い、カナダやメキシコとのNAFTA(北米自由貿易協定)に代わるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の批准の問題などがメインである。ただ、中国がパナマ運河の近くの土地を買収したり、コロンビアなどに国営銀行が進出したり、ブラジルとの食料協定を締結したりするなど米国の庭先を荒らし始めた印象で、米国はこれも①に含め始めている。

 ⑤は、モザンビークの話もあるが、基本は中国の南スーダンやジブチへの進出など、ここも対中関係が重要となっている。

 つまり、①、②、⑤は米中問題として一括りとすることができる。その意味では、「新冷戦」との呼び名がつくのも理解できるが、実際に米中はガチンコで衝突しているので、かつての冷戦とは全く異なる構図であることを理解すべきだ。

欧州戦略のカギを握るポーランド

 一方、③の欧州は、冷戦の終結後、ポーランドとバルト3国がNATO(北大西洋条約機構)に加わったことで、それまでコペンハーゲン近郊の基地からサンクトペテルブルクまで1500キロメートルあったものが、150キロメートルと10分の1の距離まで縮小した。ここに、プーチン政権はガスパイプライン(ノルドストリーム)をウクライナ、ポーランド経由でドイツまで設置して天然ガスの供給を始めるなど楔を打とうとしているが、簡単には揺らぐような状況ではない。最近の動きは既述の通りである。

 米国の欧州戦略、NATOとの関係改善要求については、後ろ向きだとか、省力化が過ぎるなどと専門家からの批判も存在する。しかし、これはレーガン大統領が冷戦末期に西ドイツから中距離核ミサイル(パーシングⅡ)を配置した戦略に似ている。軍事合理性を考えれば、ミサイル基地など米軍の駐屯(現在4000人)を可能とする場所を準備しておくことができる地域に重点的に資源配分し、ほかは極力コストを下げるのが適切という考え方である。

 実際、NATOの海軍はバルト海や北大西洋では仮想敵がいなくなったため、インド洋の海賊退治に軍艦を回すなど目的が曖昧になっているのも事実だ。これについては、オバマ政権も同じ発想だった。また、中距離核ミサイルについてもNATOの地理的勢力図の変化の下、新型の研究開発は引き続き必要だが、旧型の配備縮小は可能である。

 しかも、ポーランドは冷戦後の経済発展が遅れたものの、NATOの中では米国が求める応分のコスト負担を達成している国。今後、米国などからの投資が進めば急速な発展が見込まれ、経済的な利益を享受することも期待可能な国でもある。実は、同国には中国も接近しており、昨年暮れには首相が北京を訪問していた。今回のトランプ大統領の訪問は、その意味でも重要なことであった。