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サンダース支持者はバイデン氏に投票するのか

 冒頭に書いた撤退直後のサンダース氏のスピーチは、様々なメディアが取り上げた。それだけでなく、同氏が全米で人気の高いトークショーに招かれるなど、注目を集めている。

 各メディアのアクセス数を合計すると200万回以上になる。また、これに対する5万件ほどのSNSでのコメントのうち、サンダース氏のさらなる影響力行使を期待するものをAI(人工知能)を利用して集めると、1万件程度であった。これを多いと見るかどうかは人によるだろうが、たった1日での出来事なので、決して無視できない動きであることは事実である。

 前回の2016年の大統領選挙もそうだったが、サンダース支持者が単純に民主党候補に投票することはないというのが、現時点での選挙関係者の見方である。バイデン陣営もトランプ陣営も慎重に票集めのための分析をしているところだろう。

 鍵となるのは、現時点ではバイデン氏が左寄りの政策を受け入れることで、サンダース氏の支持を取り付けようと交渉をしていることだ。

 しかし、民主党としての立ち位置にも影響する内容なので、それが仮に合意に至っても、本当に守られるかどうかは定かではない。しかも、バイデン氏の政治家としての経歴は、むしろ白人至上主義で、トランプ大統領に近いところがあり、サンダース氏のそれとは好対照である。これは、11回の予備選の中で明らかになっている。

 にもかかわらず、バイデン氏が歩み寄るとの見方が根強くある。なぜなら、サンダース氏に近い政策案を持つウォーレン氏を副大統領候補にするか、サンダース氏の政策案のいくつかを完全な形ではないまでも受け入れなければ、バイデン氏はサンダース氏を強く支持する人々の票を手にできないからである。

 バイデン陣営から現時点で聞こえてくるのは、オバマケアを修正して、とにかく国民皆保険を達成することである。ただし、現在10%いる未加入者は、罰金を払ってでも加入しないのだから、実現は決して容易なことではない。加えて、この層には黒人が多いので、オバマ前大統領の強い支援を得る必要がある。

 ただ、それはバイデン氏が避けたいことでもある。もしバイデン氏が前回の選挙に出馬し、大統領になっていたら起こっていたであろう、オバマ前大統領による「院政」になりかねないためだ。

 もちろん、バイデン氏には副大統領時代のオバマ前大統領との名コンビぶりがあるので、黒人層からは期待があり、バイデン氏はこれを絶対に無視できない。ただし、それを受け入れると、今度は、オバマ政権のつくり出したひずみをついて登場したトランプ大統領との本戦に勝てるのかという問題にも直面する。

 なぜなら、オバマ時代に不満を持ったブルーカラー層が今のトランプ大統領を生み出したからだ。その後のトランプ政権の政策は、ことごとく反オバマである。しかも、対中関係などでは米国民の方がトランプ大統領の政策に近づいているという現実がある。

 このような状況にあっては、反中国で反独裁者の考えを持つサンダース支持者はバイデン氏ではなく、トランプ大統領に流れる可能性がある。