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民主・共和両党が足並みをそろえた「社会主義者」への対応

 ここで、サンダース氏が撤退を決めた最後の予備選にまつわるエピソードを書いておこう。そこには米国政治の裏側が見えるような動きがあった。

 ウィスコンシン州の新型コロナウイルスの感染者数は4月13日の時点で3341人と、全米では中位に位置する。ただ、州民の間では感染拡大防止の観点から、予備選は他州と同様に「州民の安全を考えて延期すべきだ」との意見が出ていた。

 これを受けて、エバーズ州知事(民主党)は4月に入ったところで全投票を郵送にする方針を示した。しかし、これはただちに、同州駐在の連邦地区裁判官によって拒否された。ただ、この地区裁判官は不在者投票を4月13日まで延期するとした。実質的な投票の延期である。

 ところが、連邦最高裁判所はこれを拒否。当初の予定通り、4月7日に予備選を実施することを支持した。

 ちなみに、ウィスコンシン州は、ブッシュ政権時代のチェイニー副大統領のお膝元で、今も彼の娘が共和党出身の下院議員となっている。同州の連邦地区裁判所は、同州の最高裁判所、連邦最高裁判所と同じく、共和党がリードする状況になっている。

 この間、エバーズ知事や連邦地区裁判所の流れを見たサンダース氏は、全米民主党委員会にウィスコンシン州の予備選を延期することを要請。しかし、同州の民主党予備選挙管理委員会も、全米民主党委員会もこれを拒否して、予定通りに予備選を実行すると回答した。

 そこでエバーズ知事は投票前日の夕刻になって予備選の延期を命令した。これで決まりと誰もが思ったようで、メディアもそれを報じている。

 しかしながら、同州の共和党本部は間髪を入れず、ウィスコンシン州の最高裁判所に知事判断の無効を申請。同最高裁は、申請を受け入れて予定通りに予備選を実施すべきだとの判断を下した。

 エバーズ知事は、予備選延期の訴えを連邦最高裁判所に持ち込んだ。だが、連邦最高裁判所も、緊急審議によって選挙当日の朝までに5対4で却下し、ウィスコンシン州最高裁判所の判断を支持した。

 政治と司法の壁は、非常に厚かったのである。

 予定通り行われたウィスコンシン州の予備選そのものは、スーパーチューズデーからの流れでバイデン氏が下馬評通りの勢いを示し、サンダース氏は予備選の投票翌日、結果が出る前に大統領選からの撤退を表明した。

 この一連の動きは、米国内でもあまり大きな報道にはならなかった。だが「民主党と共和党の共通の脅威」であるサンダース氏は、この強い圧力の存在を目の当たりにして、選挙戦継続を諦めたと言えるのではないだろうか。