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(写真:AP/アフロ)

 サンダース上院議員が民主党大統領選挙予備選から撤退した。撤退表明直後の演説は、トランプ打倒をわずかに強調していたものの、基本的には彼の人生で最後のチャレンジが終わったことへの落胆と、彼が考える米国のあるべき姿はこれからも追求していくという宣言の入り交じったものだった。

 

 前回(4月7日公開「不満募らすサンダース陣営、新型コロナ利用するバイデン氏の勝算」)までに書いてきたように、サンダース氏は上院に「Independent」として登録し、民主社会主義(Democratic Socialism)を信奉する、米国では異色の政治家だ。だが、格差問題が強まる中で、彼の看板政策である「Medicare for All」は、彼を政治の表舞台に押し上げた。

 米国では、オバマケアで保険加入者は増えたものの、いまだに10%が未加入者として残されている。また、保険の種類によって治療内容や診療費支払額の差は広がり、この不満は地方のブルーカラーを中心に高まっていた。

 一方、少ない掛け金の保険加入者が増加したことで、既存の加入者の保険料が上がり、都市部のホワイトカラーの不満も高まっていた。しかも、オバマケアの影響は、大学生を対象とする健康保険の質まで低下させたのである。

 こうした状況の下、前回2016年の大統領選挙の際に彗星(すいせい)のごとく登場したサンダース氏は、今回も、Medicare for Allに加えて、州立大学の学費の高騰を批判し、無料にすると宣言するなど、社会主義的政策を押し立てて、改めて大統領選挙に参戦したのである。若者を中心に、彼に対する熱狂的な支持者が増えたのは、こうした生活安全保障的な政策が受けたためである。

 しかし、それは同時に、資本主義のリーダーであり、民主主義を信じる米国の多くの中高年層に危機感を与えた。これには、保守系メディアなどによる「共産主義の新たな挑戦」という印象操作のようなコマーシャルも影響している。

 ここでいう「多くの中高年層」とは、米国の中間層以上と、「景気が良いとは自分の収入が増えること」を地でいくラストベルトや穀倉地帯の労働者層である。つまり、大学を卒業して経済活動に参加しているホワイトカラーと、高卒ながら自分の職をしっかり持って生きているブルーカラーだ。後者は、米製造業の国際競争力が落ちる中で仕事を失ってきたものの、トランプ政権下で復活した人々とも言える。

 米国にはこれまで「富裕層とそれ以外」「白人とマイノリティー」「ホワイトカラーとブルーカラー」という分断があった。サンダース氏の台頭は、それらの分断とは異なる、「資本主義vs.社会主義」という新たな分断の萌芽(ほうが)だったのである。