トランプ政権は、GDP比でみると真珠湾奇襲攻撃を受けた直後の1942年以来となる大規模な財政出動を決定した(もちろん2兆2000億ドルという金額は物価も違うため当時とは比べものにならない)。

 昨年夏ごろまで注目されたMMT(現代貨幣理論)については、FRB(米連保準備理事会)が3月のたった1カ月間で1.5兆ドルの米国債を買い入れたことを考えると、新型コロナが結果的にその導入を後押ししている形になっている。

 「バイデン陣営は、新型コロナで流れが変わる前に差をつけて、その後の予備選を飛ばそうとしているのでは」という前述のサンダース陣営の不安と予想は、現時点では現実のものになりつつある。

サンダース氏を選びたくないリベラル陣営

 サンダース候補は4月に入るとすぐに、4月7日のウィスコンシン州での予備選の延期を要望した。3日にはウィスコンシン州知事もDNCに延期を要請した。サンダース陣営にすれば、同氏からバイデン氏に移った流れが今回の新型コロナの影響で再び元に戻るかもしれないとの読みがあるのだろう。そのためには、各州の予備選が少しでも先に延期された方がいい。また、それは現在の米国各州の状況をみれば当然のことである。

 しかし、DNCは手紙での投票を20日まで認めるなどの代替案を出して、何とか決行しようとしている。

 ワシントン・ポスト紙は、議員を紹介する一般的な説明のところで、サンダース氏を、「民主党・バーモント州選出上院議員」ではなく、「独立派・バーモント州選出上院議員」と書いている。民主党陣営だけでなく、リベラルメディアを含む反トランプ陣営全体からしても、同氏を選びたくないという意思があるのだろう。

中国の風が再び入ってきた民主党

 4月3日、アジア・ソサエティー政策研究所の米中関係センターと、カリフォルニア大学サンディエゴ校のグローバル政策&戦略学部の21世紀中国センターが、共同で、「米国、中国、そして全世界の命を維持しよう」とする声明文を発表した。

 一昨年から対立を強めていた米中が仲直りをしてこの難局に立ち向かうことは、両国にとって悪いことではない。

 ただし、これに署名しているのは、オルブライト元国務長官を筆頭に、キャンベル元国務次官補、ライス元国連大使など、ほとんどが民主党陣営だ。

 バイデン氏が親中派であるのは有名な話である。これに対し、日本などの一部の専門家の間では、中国への対立の意識を強めているのはむしろ民主党だとする論調があるものの、やはりそんなことはない。事実として、民主党はいまだに親中なのである。これは、ワシントンのシンクタンクの動向をみていても感じる。

 新型コロナで、現在、米国に限らず欧州諸国は、一気に反中国にシフトしている。もちろんこの傾向は、中国の新型コロナ対応に関する各国への支援にも多少は影響されるであろう。

 例えば、クオモ・ニューヨーク州知事は4月4日、ツイッターで中国からの人口呼吸器やマスクの送付に対して感謝の意を表明している。トランプ政権の方針とは全く反対だ。いずれにせよ、この中国の風は、大統領選挙にも影響を与えることは間違いない。

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