3月17日の予備選に不満を募らせるサンダース陣営

 バイデン氏と候補指名を争っているサンダース氏は、そもそも民主党員ではない。米国では非常に少ないIndependent(無所属)だ。

 法案への投票に関して、民主党全体の判断に影響されない点が民主党員との最大の相違点だ。同時に、民主党の予算委員会などの独自データを使う必要がない一方、彼らのサポートも受けられない。これをどう考えるかは議員次第だが、日本人的にいえば、長年同じ釜の飯を食ったかどうか、という点での結束力が異なる。

 ちなみに、ブルームバーグ氏も民主党から共和党にくら替えしてニューヨーク市長を務めた後、今回は民主党員に戻って大統領候補となった。トランプ大統領も、元は民主党支持者で、彼の結婚式にはクリントン元大統領夫妻が参加している。このようなことは、全米レベルではさほど問題にならないが、ワシントンではあまり好まれない。ワシントンのエリート層の支持を受けにくいということだ。

 新型コロナが問題となり始めた後、バイデン氏は3月10日の予備選で6州のうち5州を制し、民主党の指名獲得に向けて大きく前進した。実はこの日、新型コロナの感染拡大防止のために、予備選を延期すべきではないかとの声は民主・共和両党の内部で出ていた。そして、3月13日に非常事態宣言が出ると、早速、ケンタッキーとルイジアナ、16日にはオハイオ州などが予備選の延期を表明した。

 このころから、サンダース陣営の不満が水面下で高まり始める。3月15日には冒頭で触れた第11回の討論会が開かれたが、会場が当初予定のアリゾナ州からワシントンD.C.に変更となったうえ、聴衆を1人も入れずに実施された。

 この時のホストの1つは米CNNだった。同社はいつも10人程度をスタジオに呼び、意見を聞くパターンなので、選び方に工夫は必要だったかもしれないが、何がしかの方法で「聴衆ゼロ」は避けられたはずだ。

 討論会は、候補者の主張を聞くことが主要な目的だ。ただ、前回の共和党候補者討論会での調査結果によると、テレビの視聴者は候補者の話に対する会場の反応を聞いて支持を決めるという傾向がある。米大統領選挙も、経済学者のケインズが示した「美人投票の原理」が働いているのだ。

 ところが、CNNなどによる「聴衆を入れる工夫」は行われず、議論が盛り上がることはほとんどなかった。あえてサンダース陣営の立場になって討論会を見直すと、前回までと同様に反応の鈍いバイデン氏をCNNの司会者がカバーするような形となり、討論会はバイデン氏にとって無難な形に終わったように感じる。

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