企業や大学には政府が支援を表明

 支援先の業種に注目すると、航空業界やクルーズ船業界など、落ち込みが激しいところには政府が支援することを表明している。具体的な金額も発表された。恐らく、株価が4分の1近くまで下落している米ボーイングも救われるだろう。トランプ大統領は他の業種についても、同様の支援を約束している。

 州立大学の学生の授業料向けローン免除についてはすでに実施しているが、今回の第3弾では、私立を含めた格付けの低い大学への経営支援を含めた。特に、白人優先主義と批判されているトランプ大統領の政策として興味深いのは、Historically Black Colleges and Universities(HBCU)への支援を明確にしたこと。例えば、格付けBa1ネガティブのハワード大学に1300万ドル、A2のガローデット大学に700万ドルを入れると発表している。

 この状況下においては、様々な人を分け隔てなく救済する、というのが、トランプ政権とFRBの考え方である。

韓国経済は追い詰められている?

 この間、FRBは海外の金融当局へのドルの供給を考えたプログラムを実行している。

 3月15日には、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、カナダ銀行、スイス国立銀行とともに、ドルの流動性供給のための協調行動の確認を発表。その後、19日には、新たにメキシコ、ブラジル、シンガポール、スウェーデン、オーストラリア、韓国とは60億ドルの、またノルウェー、デンマーク、ニュージーランドとは30億ドルの、最低6カ月間の通貨スワップ契約をした。

 この新規のスワップ契約は、同等の立場とはいえ、ありていに言えば、経済面で問題がある国へのFRBからのコミットメントラインである。

 3月31日には、ニューヨーク連銀の口座を持つ海外の中央銀行や国際機関との間でForeign and International Monetary Authorities(FIMA)に対して、米国債を使ったレポ(米ドルと米ドル債の現先取引)を行う取り決めを行った。これにより、FRBは連邦準備制度の公開市場操作の場で、海外中銀などを通じて海外市場への流動性供給が可能になり、海外発の市場混乱が米国内に波及するのを防ぐことができるようになる。

 米国は、国内発の更なる市場混乱を避けるとともに、海外発の市場混乱の波及を回避すべく、必死な行動を続けているのである。

 中でも注目すべきは、韓国が3月19日に、FRBからの通貨スワップを、前回(2008年のリーマン・ショック時)の30億ドルから2倍に増加した点である。同国は、世界第10位のGDPを誇り、対峙しているのは陸続きの北朝鮮であるにもかかわらずイージス艦の追加やいずも型空母の建造など羽振りのよい財政活動をしている。新型コロナの影響が大きいとはいえ、日本との通貨スワップの継続を望まない韓国中銀が、今回はFRBとの通貨スワップを倍増したのである。

 新型コロナの韓国経済への影響は多々指摘されているが、このFRBと韓国中銀の通貨スワップの増額は、どう考えてもFRB側が求めるはずはない(米国が韓国に資金問題で助けを求めるはずはない)。韓国側からの要請だろう。

 韓国の金融界に詳しい、米国にいる韓国系米国人の研究者によれば、韓国側は対等での契約だと主張しているが、事実はかなり苦しい国内経済状況の下、韓国側が非常に強く要請したものだったとのことだ。どうやら、韓国は経済的にかなり追い詰められているらしい。前回も、半年の契約を2010年まで延長したという経緯があるため、今回もどれほどの期間となるか要注目だ。

 このように、米国は新型コロナそのものを収束させることに加え、この間の経済をとにかく崩壊させないこと、そして収束後にV字回復をさせることに向けて対策を打っている。

 もちろん、今後、さらなる金融政策や財政出動が必要なことになるかもしれない。ただ、迅速かつ大胆に行動していることは米国民に伝わっており、一致団結しているのは間違いない。実際に米国で暮らしていて、この1カ月間の変化は強く感じている。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。