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National Emergency(国家非常事態宣言)は経済救済策

 ここで、トランプ大統領が3月13日の午後3時30分からの記者会見で発した国家非常事態宣言について触れておきたい。

 トランプ大統領は「国家非常事態法」を発動して各州への支援や学生の公的機関からの借り入れの金利の停止といった措置をとると宣言。これらのことを含めて全体で500億ドルの予算を執行するとしている。

 これは、1月31日に発動していた「公的健康サービス法」に基づく公的健康非常事態宣言と合わせることで、65歳以上の高齢者を対象とするメディケア、低所得者対象のメディケイドといった公的健康保険対象者が州を越えて自由に医療を受けられるようにして、医療機関が満杯で受け入れ不可能となるリスクを軽減することを目指している。

 さらにスタッフォード法も発動して、それまで非常事態宣言を出していた州が進めている対応を、FEMA(米連邦緊急事態管理局)が統合的に進めるようにした。同法は、各州の要請に対してFEFAが予算を付けて動く仕組み。FEMAには340憶ドルの資金がある。この発動を受けて、これまで非常事態宣言を出していなかった多くの州も3月16日に非常事態宣言をした。

 なおFEMAの担当者は、ニューヨーク州で初めて感染者が出て、同州からスタッフォード法に基づく資金要請の相談を受けた3月2日には準備を開始したと語っていた。このため、3月14日の週末から迅速に対応できたとされている。

 これらは、決して景気刺激策ではないものの、今の全米の関心は新型コロナウイルスをいかに早く封じ込められるかに向いているため、3月13日の米ダウは午後3時半の発表から相場が閉じるまでのわずか30分で1000ドル上昇したのである。

 筆者が日本銀行の金融調節部門で働いていた際、「金融調節はアート」「市場は鏡」という言葉を習った。前者は、一度の金利や量操作だけでなく継続的な行動の結果や総裁(米国はFRB議長)の発言も使って市場を誘導するということを意味する。後者は、中央銀行の政策は市場の反応で結果を見ることを意味する。今でもそれは変わらないと思う。

 3月3日、FRBがFFレートを0.5%下げた際、その積極的な行動とパウエル議長の記者会見が注目され、一時は米ダウも上昇したが、その後、様々な理由から反落した。3月15日の夕方に、金利を1%下げて2008年以来のゼロ金利政策に入ると同時に、米国債の大量購入などを実施する量的緩和を開始すると発表した。だが、残念ながら、上述のようなフェイクニュースの影響もあって、16日の大暴落につながった。

 繰り返すが、この1カ月ほどの金融・株式市場の混乱は尋常なものではない。しかし、筆者は同時に、これは中国政府の動きとも関係していると考えていた。陰謀論ではなく、市場の関心が中国から米国に移ったという見方だ。

 具体的には、中国の各省の保健当局が2月末までに相次いで新型コロナの終息宣言のようなコメントをウェブに掲載したこと、3月10日に習近平(シー・ジンピン)国家主席の武漢入りが報道され、翌11日には世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言をしたこと、などからである。