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 2月25日のサウスカロライナ(SC)州での第10回民主党大統領候補討論会は、アイオワ(IA)州とニューハンプシャー(NH)州で勢いに乗ったサンダース氏への批判が中心で、発言時間もサンダース氏の15分、ステイヤー氏の7分以外は、ほぼ13分と各自おおむね公平な時間配分だったが、それが逆に足の引っ張り合いを目立たせる印象だった。

2月25日、サウスカロライナ州での討論会に登場したサンダース氏(右から4人目)ら民主党の大統領候補(写真:ユニフォトプレス)

 このディベート中に体調を崩したブティジェッジ氏は26日のフロリダ行きをキャンセルした。26日朝にはSC州で黒人票の鍵になるといわれたクライバーン下院議員がバイデン氏支持を表明した。ちなみに、24日にはウィリアムソン元大統領候補がサンダース氏支持を表明しており、民主党の予備選は年齢や主義・主張を超え混戦の様相を強めている。

 筆者の知る1980年以降、過去の予備選でここまで多くの候補がメディアなどを通して激しく争うことはなかった。DNC(民主党全米委員会)の幹部は、ディベートの効果が回を追うたびに落ちているうえ、民主党内の混乱という印象を与えているという悩みに直面していると語ってくれた。

 民主党としては、2月29日のSC州予備選と3月3日のスーパーチューズデー(16州)の結果で、何とかトップ2人の争いに絞りたいところだが、1人は2016年と同じくサンダース氏で当確なので、党内の分断が7月の党大会まで続くのはほぼ間違いないだろう。

 一方、共和党は、サンダース氏が予備選に勝利しても過半数獲得は無理で、2回目の投票をする可能性が高いとみる。しかし、そこで他の誰かが逆転すればサンダース氏が激怒するのは間違いないので、誰が民主党候補になるとしても、同党内の混乱は避けられず、本選のトランプ大統領優位は一段と強まっている、ということになる。

 なお、トランプ大統領がバイデン氏に触れなくなってきているのは、彼が本選に出てくる目はほとんどなくなったとの分析による。

米国の中高年層は社会主義が嫌い

 米国人にとって「社会主義」という言葉は、「共産主義」だったソ連との冷戦を想起させ、中高年層を中心にアレルギーがある。第2次世界大戦直後からの争いを経て、レーガン、父ブッシュの12年間の戦略によってようやく打倒したイデオロギーがなんと今度は自国に現れた、という印象だ。

 このため、「社会主義」に対しては民主・共和を問わず違和感を持つ人が多い。特に米国人にとって、「社会主義」と「共産主義」の違いはほとんどわからず、ただ脅威であり、ナンセンスなのである。

 保守よりもリベラルのメディアが、NH州の結果が出てから、異口同音にサンダース氏の政治信条や経歴への批判を強め、「2016年の亡霊」「NH州の勝利はナチスのフランス占領のようだ」「フランケンシュタインだ」など辛辣な評価まで始めたのもそのせいだ。

 これに対して、サンダース氏も「ソ連もキューバも中国も悪いことばかりではない、評価すべきものは評価するのが大事」と一党独裁の共産主義国を持ち出すから、一段と「サンダース氏は共産主義の権化か」という疑問につながっている。

 しかし彼は若者には受けている。また「オバマ支持=バイデン支持」と位置付けられてきた黒人や、経済的な弱者の多いラテン系(Latino)からの支持も上昇中だ。

 では、彼の信奉する「民主主義的な社会主義」は今回の大統領選で支持されることはあるのだろうか。