偽悪者に徹して勝利をつかんだトランプ

 2016年の前回選挙では、共和党も同様の討論会を実施した。このやり方が奏功したのは、トランプという「稀有(けう)の偽悪者」がいたからに他ならない。クレイジーと言われようが、レイプ魔と言われようが、へこたれず、やがてそれをごまかさない正直な態度が国民に受けた。

 また、トランプ大統領はむしろ偽悪者を地で行く態度を見せたが、それを後押しするような事件も多発した。黒人差別だと批判される中で、黒人による銃乱射事件が起きたことは典型だ。彼は銃規制の強化が必要なのではなく、銃を持つ個人の問題としてそれを批判したのだ。このような彼の強気な姿は、斜陽の雰囲気のあった米国が強い大統領を選びたいという要求に合致した。

 残念ながら、今回の民主党候補者の中にはそのような候補者はおらず、誰もかれもがエリート、またはこれまでの米社会での成功を背景とした優良な候補者として選挙活動をするだけだった。真の自分の良さを打ち出せなかったと言えるだろう。

 今でも高い人気を誇るオバマ前大統領は、かつての相棒であったバイデン前副大統領をまだ支持していない。前回の大統領選には出なかったとはいえ、過去の例から言えば、前大統領がその副大統領を支持するのは当然のことにもかかわらず。果たして、民主党に大統領選挙の勝機はあるのだろうか。

この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。