民主党全国委員会はバイデン推し?

 民主党の各候補の人気投票状況をみると、全体ではバイデン氏が34%にまで上昇し当確に近づいた感がある。ただ、2月3日に党員集会が予定されているアイオワ州、同11日のニューハンプシャー州ではサンダース氏の人気が上回っている。過去の傾向を鑑みれば、両州を取った勢いでサンダース氏が前回のような旋風を起こす可能性は非常に高い。特に、彼の人気は若者に高く、17歳の環境活動家、グレタ・トゥンベリさんの登場で一段と加速している。

 ところが、弾劾裁判は短くても1月末、長ければ2月上旬まで続く可能性があり、既述のようなルールを前提とすれば、サンダース氏は他の2人と同じく選挙活動ができなくなる。この状況をバイデン氏が利用すれば、最初の2州でも逆転勝利する可能性が出る。その場合、一気に民主党大会まで大差をつけて走り続けるという見方が民主党内には広がっている。

 既にケリー前国務長官など有力者の支持を受けているバイデン氏は、前回の予備選でヒラリー候補の勝利を決定づけたスーパー・デリゲート(民主党特別選挙人)の数で有利に戦える。この見方は決して単なる予想では済まない可能性が高い。

 なお、弾劾裁判での24時間の持ち時間を共和党が1日に12時間の2日間としたのに対して、8時間で3日間と日数を伸ばしたのは民主党であった。

候補者討論会は裏目に出た感

 今から1年ほど前、日本の米国専門家を含めて、オルーク前下院議員(テキサス州)に注目する声があった。2018年の上院選挙で現役のクルーズを敵に回して善戦したためだが、そもそも彼に予備選での勝利の可能性は最初からなかったと言われていた。

 彼が得意とする草の根的な選挙戦は横綱相撲のクルーズ上院議員を苦しめることはできても、同様な戦略をとるブディジェッジ・サウスベンド前市長と5人のマイノリティー候補の中で特徴が消されると見られていたからだ。昨年8月に彼の地元エルパソで起きた銃乱射事件の際に、涙目で記者会見したことも「弱い候補者」との印象を与えることになった。

 当時から民主党内では、バイデン前副大統領、サンダース上院議員、ウォーレン上院議員の三強に加えて、ブディジェッジ氏がダークホースになるという見方が優勢だった。実際、今もそうなっているのだが、民主党全国委員会には、ここに至るまでに紆余曲折(うよきょくせつ)が多すぎたとの反省がある。

 このような事態となったのは、予備選が始まる8カ月前から始めた候補者討論会に原因がある。中道と超リベラルの二極に分裂する中、双方に分かれた候補者が政策的な違いのない中で競争しなければならないという問題に直面したからだ。有権者にとって候補者が新鮮に映った初期はそれでもよく、庶民受けする表現かどうか、とっさの質問にうまく対応できるかなど、基礎的能力で判断するという短期決戦型の戦いができた。

 ところが、同じようなディベートが繰り返されると国民に飽きが来るため、各候補者はその中で特徴を出そうと背伸びし始めた。その中では、民主党が本来嫌うマイノリティーを差別するような発言が出るなど、足の引っ張り合いも起きた。討論会を通して、民主党が抱える問題が露呈された感がある。

 例えば、カストロ元住宅都市開発庁長官は、高齢であるバイデン氏の記憶力を疑うような発言をしてディベート後に謝罪に追い込まれた。ハリス上院議員とガバード下院議員に至っては討論会の場で口論を始めている。

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