焦点は電話会談から武器供与までに何があったか

 2019年11月12日付拙稿「政治ショー以上にはなりそうもないトランプ弾劾」でも書いたように、状況証拠という面では弾劾を実現させるような内容ではない点に民主党員も国民も気づいている。

 下院民主党による1月25日までの3日間の弁論とトランプ弁護団の初日の弁論を終えたところで、裁判の焦点は拙稿の中で指摘した「内部告発者が提供した昨年7月25日のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の電話会談から9月下旬の武器供与までの約2カ月に、下院民主党が指摘するような不正があったかどうか」に絞られた。そして、それを考えるための証拠は7月25日の電話記録の他に出ていない。

 結局のところ、下院民主党による弁論からはトランプ大統領の2つの不正(権力乱用、議会妨害)を証明する事実は出てこなかった。検察役の下院民主党は、確実な証拠がないままに上院での弾劾裁判に臨んだということだ。

 昨年末の逃亡で注目が集まったゴーン事件では、日本の検察が告訴した場合の有罪率が99%という点が世界的な注目を集めた。有罪率の高さが、「日本には検事はいるが裁判官がいない」との揶揄(やゆ)を含めて世界を駆け巡ったのだ。ただ、2018年のデータを見ると、警察による検挙数のうち検察が起訴した割合は37%にすぎない。また、どの先進国でも有罪率は高いものだが、それは検察の起訴が有罪率の高いものに絞っているからである。

 ところが、トランプ弾劾は全くその逆だった。むしろ、トランプ弁護団は4人の政府関係者の証言から、ウクライナが米国の武器供与停止を認識したのは8月末だったと主張した。問題の空白期間は2カ月から1カ月に縮まり、(25日時点では)無罪の可能性が高まっている。

民主党が形勢不利になりつつある弾劾裁判

 現時点において、トランプ弁護団は武器供与に時間がかかった理由を以下のように説明している。1つは武器供与の負担を他の欧州諸国にも分担してもらうため、もう一つは8月末に米国を襲ったハリケーン・ドリアンの災害対策に集中したためだ。

 実際、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と9月1日にポーランドで会う約束をしていたが、このハリケーンを理由に国外出張を中止。代役としてペンス副大統領が第2次大戦勃発80周年に出席したのは記憶に新しいところだ。なお、両大統領の電話会談は7月9日、10日、26日にも実施され、最後が8月27日だったが、ここでも民主党が主張する権力乱用を示唆する会話は確認されていない。

 こうした中、共和党が求めている内部告発者のヒアリングをトランプ弁護団も改めて求めており、早期の決着を図ろうとしている。一方、下院民主党は1月25日の弁護団論告が終わった後、内部告発者よりも、ボルトン前大統領補佐官などの方が事実を知っているとして、彼らの証人喚問を求めていくと宣言した。

 だが、上院が1月22日に13時間もかけて決めた今回の弾劾裁判ルールでは、ボルトン前補佐官などの証人喚問を実施するには上院の決議で過半数を獲得する必要がある。共和党から4名の造反者が出ることを期待するのは、1月25日の論告終了時点では難しい。

 雰囲気的には下院民主党は不利である。

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