「大統領選挙には負けたが、暴力を排除して平和裏に新政権への移行を進め、2022年の中間選挙の準備を始めよう」

 21年1月13日、共和党全国委員会(RNC)の委員長からのメッセージが関係者に送られた。同様のメッセージは数時間後にも届いた。文面は合衆国をつくった人々の意志に従うことを基本としたシンプルなものだったが、同じメッセージを2回送ることで、共和党としては、1月6日のトランプサポーターらの米連邦議会議事堂への乱入の混乱を引きずらないとの意志を示した。

 トランプ大統領も1月13日の夕刻に、改めて暴動を批判して平和裏に政権移譲が進むことを求めるコメントを出した。

 トランプサポーターらが議事堂に乱入したことで、うろたえたのは上下両院の議員たちではないだろうか。誰もデモ隊との対話を試みず、逃げ出す者と武器を持って身構える者に分かれた光景は、民主主義の国を代表する議員としてふさわしいのかと多くの米国民は考えたようだ。複数の世論調査の結果がいずれもトランプ大統領の弾劾に否定的なのは、本来の役割を忘れて「扇動者」を決めつけようとする議員たちの対応に失望した面もあるだろう。

米下院は1月13日、トランプ大統領の弾劾訴追を決議した(写真:AFP/アフロ)
米下院は1月13日、トランプ大統領の弾劾訴追を決議した(写真:AFP/アフロ)

 米下院は1月13日、トランプ大統領の弾劾訴追を賛成232で決議した。賛成票を投じた人の中には10人の共和党下院議員が含まれる。民主党のペロシ下院議長とシューマー上院内総務は、大統領就任式前日の1月19日には上院で弾劾裁判を始めるという最短コースを目指している。また、13日からは2万人強の州兵がワシントンの警備を始め、複数のホテルが就任式当日までの一般客の予約を中止すると発表している。また就任式当日の地下鉄の運行も制限されることとなった。ホワイトハウス近くに準備中の就任式会場の周囲に作られつつある2メートルほどの高さのバリケードなどは、州兵の見回り姿と合わせて911テロの際の厳戒態勢ような様相を示している。

 何もかもが異常事態である。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3837文字 / 全文4673文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。