ホロウィッツ監察官が掘り起こした問題の本質

 ホロウィッツ報告の核心は、大統領選挙で勝利するために海外勢の介入を利用したかどうかという米国史上初めての不正を調べたことにある。また、FBIなど国益(=国民の利益)のために働くはずの公務員が国民を危険に陥れようとしていた事実を見つけ出したことも重要なポイントだ。モラー特別検査官がコミー前FBI長官に関連した対象を調べていたのと比べて、その意義も捜査範囲も広い。

 この報告書を読むと、2016年6月にDNC(民主党全国委員会)のホストコンピューターから情報が漏洩した際に、ロシアの関与があったのではないかというところからFBIが問題意識を持ち始めたということが分かる。

 同年7月に調査チームを立ち上げたFBIは、やがてロシアが大統領選の本選にも介入しているという疑念を基に調査を始めた。この時、FBIの捜査チームはペイジ氏を容疑者と考えて捜査を進めるため、元英国諜報部のロシア担当(=スパイ)だったスティール氏が作成した文書を証拠として裁判所に提示、ペイジ氏に対する盗聴を含めた捜査にFISAを適用する許可を得た。その後、FBIは適用を更新、捜査は少なくとも2017年7月まで続いた。

 ところが、このスティール氏の文書はフュージョンGPSという調査会社がDNCの資金で作成したものだった。FBIは民主党の資金で作成された文書を証拠に、選挙の競争相手である共和党陣営の関係者を盗聴する権利を裁判所から認めてもらったのだ。

 しかも、スティール文書の情報元はたった1人のロシア人で、FBIが2017年にこの人物をインタビューしたものの、全てが伝聞や噂にすぎず確たる証拠は得られなかった。

 また、ロシア・モスクワのリッツカールトンでトランプ大統領が複数の売春婦と一緒にいたという話が2017年に世界を駆け巡ったが、それについても、ホテルの従業員に対する確認の形跡が全くないことも分かった。

 一般的に、この程度の話であればスティール文書が裁判所からFISA適用の許可を得るのには不十分と考えるものだと思われるが、FBIの捜査チームは盗撮許可を更新する際に、その事実を裁判所に告げずに更新した。

外国のスパイによるフェイクニュースを活用

 FBI捜査チームの不適切な対応は他にもある。ペイジ氏に対して3人のロシア人との面識の有無を尋ねた際、ペイジ氏はそのうちの1人に対して「CIA(米中央情報局)の協力者として接触した」と回答。CIAもペイジ氏は協力者と答えたにもかかわらず、捜査チームはペイジ氏の属性を「CIAの協力者ではない」と変更している。

 また、FBIは自分の文書をマスコミに売り込んでいたスティール氏との接触を組織として避けていたはずだが、実際にはFBIのナンバー5がコンタクトポイントとして接触、その妻がフュージョンGPSの社員だということも判明した。

 極めつきは、FBI捜査チームの1人が自身の愛人でもあるFBIの弁護士、リサ・ペイジ氏(カーター・ペイジ氏とは無関係)に、トランプ大統領の就任前から同大統領をばかにするメールを送付、就任後にはトランプ大統領を弾劾できないかという趣旨のメールを送っていたことが分かったことだ。連邦政府職員にあるまじき行為である。

 結局のところ、FBIは外国のスパイが民主党の資金で作成したフェイクニュースを使い、捜査で分かった事実をねじ曲げ、CIAに協力した米国民をあたかもテロリストのように扱ったのだ。その背景に、ペイジ氏が共和党の大統領候補の支援者だったというバイアスがあったと勘繰るのはごく普通のことだろう。

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