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「購買で活躍できる人材がいれば、知らせてほしい」

 事実ゴーン氏はリバイバルプラン発表の直前、購買担当の幹部に向かってこう語っている。

 「購買部門で活躍できる優秀な人材がほかの部署にいれば、知らせてほしい。すぐに異動させよう」

 そんな思いがあっただけに、説明会ではゴーン氏自身、あるいは購買担当副社長の小枝至氏から、たっぷり1時間半をかけて購買方針の説明がなされた。

 内容は、要するに3年間で20%を目標に掲げた購買コスト削減への協力の要請だ。

 「00年度8%、01年度に7%、02年度は6.5%の購買コストを減らして、3年で20%コスト削減するのが目標だが、もちろん前倒しで原価低減してくれるのは大歓迎。前倒しで初年度に20%下げるというところがあれば、日産はそこを選ぶ」「グローバルで部品や資材の調達先を今の半分に絞り込む。選ばれたサプライヤーには取引量を増やすことを保証できるので、原価低減につなげてほしい」「資本関係の有無は発注の際に考慮しない。グローバルレベルで競争力のあるサプライヤーを日産は選ぶ」…。

 この時、雛壇のほぼ真向かいの客席からゴーン氏に熱い眼差しを送る男がいた。仏大手部品メーカー、ヴァレオの日本法人社長、ティエリー・ドゥリュー氏である。

 ヴァレオ本社CEO(最高経営責任者)のノエル・グタール氏から対日戦略強化の密命を帯び、1999年6月以降の約4カ月、日本での生産拠点を確保すべく複数の部品メーカーと交渉を重ねてきた。ドゥリュー氏はそのうち日産系の大手部品メーカーであるユニシアジェックスとの間で、2日後の10月21日にクラッチ事業の合弁設立合意を発表するという手はずを整え、この説明会に臨んだ。「我々にとって絶好のチャンス」。ゴーン氏自身が説明する購買方針を聞きながら、ドゥリュー氏は内心笑みを浮かべていた。

 だが、そこから少し離れた場所にいたユニシアジェックス社長の任田晃一郎氏は、少し複雑な気持ちでいた。