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「どんな予断も持たずに日産へ行く」

 言い切っていいのか。

 「自信などあるわけがない。しかし米国であれ、ブラジル、フランスであれ、自分の会社の再建に己も手を貸したい、加わりたいと思う社員の気持ちに、変わりはない。この気持ちを土台に、後は実行あるのみとなれば、私はむしろ楽観的だ。日本人はいざ決心したら、果断に動くものだから」

 「率直であること。態度に裏表をつくらないこと。それを続ければ、嘘偽りのないところがわかってもらえる。このことにも国や文化の違いはない」

 

 「難しいこと、辛いことに、情熱とビジョンをもって立ち向かわせることができたなら、成功したも同然だ。そしてかつては失われていた自信が、みんなの間に取り戻されているのを見る。これにまさる喜びはない」

 

 日産にやってくるのは、こういう素朴極まる再建論を、てらいやためらいなく熱く説いて倦まない経営者である。両社の立てた見通しでは、2002年に15億7000万ドル、05年までに30億ドルの経費削減を図る計画だ。これが絵に描いた餅に終わりかけてはいないか。ゴーン氏が憂いとは無縁の今の表情をどれだけ保っていられるかで判断できることだろう。

 「どんな予断も持たずに日産へ行く」とゴーン氏は言う。それは念の為言えば、工場閉鎖を含め「どんなことでもあり得る」ということだ。なぜなら氏によれば、「一切の妥協を許さないことが一つあるとすれば、それは日産を再建せねばならないという一事」だからである。

(本記事は日経ビジネスの1999年4月19日号の記事を再編集したもので、登場する人物の肩書、企業・組織名、資本・提携関係などは原則として取材当時のものとしています。次回に続きます)

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