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「解は常に、内部にある」

 ルノーのさる筋によると、欧州における日産の部品調達コストはルノーの場合より1割以上高いという。早速調達面から、規模の利益を求める模索が始まろう。またゴーン氏によれば、車台共通化に向けた担当者間の交流は、提携発表から時をおかずに始まった。

 ゴーン氏の頭には時間割もできている。当初3カ月は日産の現場を歩き、内外で「1000人とは言わないが極力多くの人と話をする」。そこで固まった印象をもとに、改革案づくりにかけるのが次の3カ月。「99年10月に開かれる東京モーターショーの場で、日産復活の方針を発表する」というものだ。

 しかし改革の細目は、氏によれば上から押し付けられるものではない。

 「世間が作り話を好むのにはあきれてしまう。私を称して人が言うのは、コストカッターだ、コストキラーだと。よろしい。その半面、2年やそこらでルノーを立て直した男だ、と。でも考えてみてくれ。社員がもしそっぽを向いたら、計画を支持しなかったら、夢を分かち持たず、戦略に理解を示さなかったら、どうやって会社の再建なんてできるだろう」

 「ルノーに来たとき、業績は不振、会社は自信を失っていた。しかし驚いたのは、解決策がすでに社員の頭の中にあったことだ。解は常に、内部にある。長所短所を知り尽くし、どこに可能性があるかを指摘できるのは当事者だ。素材はすべてそこにある」

 ゴーン氏は、部品メーカーに納入価格引き下げを迫る一方、業者を絞って長期的取引を保証した。戦闘的な組合の妨害、フランス政府の干渉を覚悟の上で、ベルギー工場の閉鎖を進言した。コストカッターの称号はここからきた。だがこれら策の多くは、ルノー社内で必要を指摘されつつ、日の目を見ていなかったにすぎないという。

 「そこに耳を傾けて、再建策を練り上げる。自分が長年考え、悩んできた問題が正当に考慮され、取り上げられていると社員が感じることのできるプランだ。日産でも同じことをしたい。日産の抱えた問題に正面から対処する力強い再建策をつくり、そこに人々をひきつける。成功のカギはそれだ」  

 言うは易く行うは難しだ。とりわけ日産は、ついに自分から変わることのできなかった企業ではないのか。

 「彼らの誇りが動かすと思う。日産をいま一度、一級のメーカーにしたいという大変な思いがみなぎっている。誰しも日産を誇りに思っている。それが再建のバネだ」