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是が非でも成功させる決意

 立て直せるか否か、日産には5年の「試用期間」が与えられた。シュバイツァー氏は、ゴーン氏というルノー・ナンバー2を送りこむことによって、是が非でも成功させる決意を示した。一方ゴーン氏は、パトリック・ペラタ氏(43歳)と、ティエリー・ムロンゲ氏(48歳)という2人を帯同、両翼を固める。

 日産の副社長として製品企画、企業戦略を担うペラタ氏は、29歳のときルノーへ入社して以来、技術畑を歩んできた。特にシャシーの専門家である。ルノーの製造工程を見直したゴーン氏に、右腕として仕えた。「クルマのことなら何でもわかっていて才能豊か、全幅の信頼を置いている」とゴーン氏の評する人物だ。

 ムロンゲ氏は、白井忠弘副社長の下で財務担当常務となる。91年にルノーへ入るまでは財務省にいた元役人。それでも「巨額の債務を減らしつつ、将来に向かっての前向きな備えも怠らないという難しい舵さばきにふさわしい」とゴーン氏は言う。

 以上3人を頂点とし、パリからはさらに30~40人の管理職が東京へ移る。「最終選考しているが、名前は明かせない。奥さんたちが、会社から聞く前に日本の雑誌で知るなんてことにはしたくないからね」と、珍しく軽口を叩いたゴーン氏自身は、妻に4人の子供と来日する。

 「12歳を先頭に4歳まで。パリでインターナショナル・スクールに通っていて、日本の友人がたくさんいるらしい。子供たちはその友達から、日本のことを教わっている。どこの店が良くて、スキーするならどことか。私からの説得の必要がまるでなし。大いにはしゃいでいる」

 ここで、インタビュー冒頭のゴーン発言に戻らなければならない。手勢と共に日産へ乗り込むことをメディアはすでに、まるで進駐軍を連れ領地支配に赴くことでもあるかのように描写している。ゴーン氏はそのことに不満をあらわにした。

 「確かに人を連れていく。約束通り、選り抜きの人材だ。けれど『これが俺のチーム』と打ち出す意図は全くない。彼らは日産で随所に散らばる。そして両社をつなぐ橋になる」

 「日産からルノーへ向けて同じことをしようとしているのを忘れないでほしい。出ていく日産社員は少なくとも20人になる。ルノーで購買に、設計や開発に散らばるだろう。目的はただ一つ、提携がもたらす相乗効果を一刻も早く実現することだ」

 「迅速に」「一刻も早く」「時間をかけずさっさと」。そんな副詞が、ゴーン氏の口から繰り返し飛び出した。

 「私は日産で、私の周りに日産のチームをつくるんだ。そして立て直す」