気鋭のデザイナー、nendoの佐藤オオキ代表。コクヨや丸井グループ、三菱商事といった日本の大企業のみならず、仏ルイ・ヴィトンや米アップルなど海外のビッグ・ブランドからも仕事が舞い込む。

日経ビジネス編集長・東昌樹が聞く動画シリーズ。第4回は、デザイナーの仕事について。佐藤氏は、「冷蔵庫の中の残り物を使っておいしい料理を作る“主婦”のような仕事」と話す。その理由とは。

>>テキスト版編集長インタビュー「nendo佐藤オオキ氏が語る『デザインで経営を変える』

佐藤オオキ(さとう・おおき)
nendo代表/デザイナー

日本のデザイン界で、最も注目を浴びているデザイナーの一人。1977年カナダ生まれ。2002年、早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了、nendo東京オフィス設立。プロダクトのデザインを手掛けるほか、最近では事業や組織のデザインにも深く関与し、大企業のイノベーションを支援している。グッドデザイン賞など国内外での受賞多数。米ニューヨーク近代美術館など世界の美術館に作品が収蔵されている。(写真:吉成大輔)

ラインアップ(全7回、火曜日掲載)
  • 01 大学生でビジネスの面白さに目覚める
  • 02 「デザイン思考」では物足りない
  • 03 僕は「ピエロ」になり気付きを与える
  • 04 デザイナーは「シェフ」ではなく「主婦」
  • 05 アップルは遠いが日本企業にも変化の兆し
  • 06 大企業がデザインを生かすのに大切なこと
  • 07 僕の最大の能力はすぐに夢中になれること
※今後の内容は変わることがあります
>> 一覧

東 昌樹(日経ビジネス編集長):企業のデザイン力や商品企画力は落ちているのでしょうか。

佐藤オオキ氏(nendo代表取締役 チーフデザイナー):僕は、落ちているというよりも、“かみ合わせ”が悪いのではないかと思っています。 ひょっとしたら組織の体制によるものかもしれませんが、こっちの部署のノウハウがあっちの部署に伝わっていなかったり、古くて使い道がないと思ってお蔵入りになった技術が実はまだ使えたり。前線で頑張っている営業の人にとっては、 「こんなおいしいネタがまだあったんだ」ということが、なぜか伝わっていなかったり、気付いていなかったり……。

 僕はデザインは“主婦の料理”に似ていると思っているんです。デザイナーは“シェフ”のように最高の食材で最高の料理を振る舞う職業だと思われがちなのですが、実はどちらかと言うと主婦のような仕事です。冷蔵庫を開けてみて、こんな食材が残っていたんだ、まだこんな調味料があったんだと気が付いて、それを 冷蔵庫の奥から引っ張り出してきて、それを見ながら献立を考える。それがすごくおいしい。何だ、うちの冷蔵庫にある食材でもこんなおいしいものが作れるのかと、周りに気付いてもらうというのが僕の仕事だと思っています。

 そうした“食材”の棚卸しが、すごく大事だと思いますし、冷蔵庫の中に眠っているのは決して悪い食材や傷んだ食材ばかりとは限らないと思っています。やはり、自分のことはなかなか理解できない、分かっていないということが、すごく大きなポイントのような気がします。

この先のポイント
  • ●ユーザー調査を信じられない理由
  • ●解決して初めて、何が課題だったか気が付く
  • ●日本企業はマニュアルで自分自身を縛っている

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