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大きな仕事って、やっぱり面白いですね。よくこれだけのことを、これだけの人々が、これだけ厳しい時期に、志を曲げずにできたな、と、いろいろな方からお話を聞くたびに思うんですが。

木谷:そうですね。あとから考えれば必然、当たり前の打ち手だけど、当時は、その志に向かってやるといっているんだから、そうだよな、やらないとな、そのためにこのエンジンを世界で初めて(の技術を開発して)やるんだなと。そういうことを考えると、やっぱり燃えますよ。

エンジニアならば、まして燃えますよね。

「世界で初めてだから“研究”なのです」

木谷:うん、僕は大学の研究室のときの指導教授に「研究というのは、世界で初めてやるから研究なのだ。誰かがやったのをコピーするのは研究とは言わないよ」と、たたきこまれたわけですよ。

おお。怠け心をナタでぶった切るような名言。

木谷:だから「今の世界一がどこか、文献を調べて知った上で、自分の研究をやりなさい」と。研究室でもらうテーマも、レベルの差はあれど、「これは、今時点は世界で誰もやっていないテーマだ」と、先生が出してくれるわけです。「でも世の中、みんなが頑張っているから、ちゃんと論文を読め。週に1回ぐらい論文を読みに行け」と言われました。自分の研究テーマが、まだ負けていないかどうかいつも見ておけと。

うひゃー。

木谷:徹底的にたたきこまれたので、「このスカイアクティブエンジンで世界初をやる、世界一を目指す」という、人見(光男氏、エンジン開発の中心人物)の話を聞いたときも、「うん、わかるわかる。当たり前だよね。やっとまっとうなことを言ってくれる人が出てきた。じゃあ、サポートしないといけないな」と。

教育って大事だな……。ちなみに何という先生に学ばれたんですか。

木谷:瀧本昭夫先生です。僕は生産機械工学科の、材料工学研究をしたんですよ。何をやっていたかというと、定量化なんです。例えばプラスチックなんかのぜい性材料に穴を開けて、ぱーっと割れていく、その挙動を全部測って、それを1本の式で表す。

それって、リアルワールドとデジタル(この場合はデジタルじゃないですが)ワールドを近づける、モデルベース開発(MBD)にものすごく近いことですね。

木谷:そうそう。でもあの当時は高速カメラがないから、引っ張り試験で粉々になった破片を全部集めて、それでどういうふうに割れていったかという挙動を推測する。

……気が遠くなりそうだ。そんなことをするんですか。

木谷:要はどういう材料特性にしていったら、強度を保てるのかという研究をしていたんです。面白いのは、その実験をするテストピースも自分で作って、自分で計測をして、そのからくりをちゃんと仮説を立てて、定量化する。

自分でテスト用の素材まで作って、試して、仮説を書いて、検証する。全部自分でやる。

木谷:それを世界で誰もまだやっていないテーマで行う。研究とはそういうことだよねと。論文読んで、材料を作って、研究して、と、朝8時から夜中の12時まで研究させられましたから、一番人生で研究した。うっかり下宿で寝ていたら、先生から電話がかかってくるんですよ。「出てこい、昨夜の実験データはどうなっているんだ、卒業させないぞ」と。先生も朝8時ぐらいから来ていますから。

しかし、自分で材料から作らされるって、実のところ意味はあったんでしょうか。