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(前回はこちら→「予算がない、だからこそ先に走り出せたマツダ」)

コンピューターによる設計から、製造、シミュレーションによるテストといった、データが作り出す「デジタルワールド」と、実際に我々が生きている物理世界、「フィジカルワールド」。それをマツダがどうつなげてきたのかが、「マツダ・デジタル・イノベーション」、MDIの歩みである。そして、この手のシステムはハードとソフトを入れるだけではなく「今までのやり方を続けたい」と考える現場の人々をどう乗せるか、というほうが大問題だ。そんなお話を伺っています。

木谷昭博執行役員・MDI&IT本部長

木谷:繰り返しになりますけれど、まずCAD(Computer Aided Design)によって、物理的に不可能な設計はできなくなりました。そしてCAM(Computer Aided Manufacturing)によって、設計図通りに工作機械で加工ができるようになりました。次はいよいよCAE(Computer Aided Engineering)。

これができれば、実際に部品や試作車を造らなくても、衝突実験をしていちいち潰さなくても、どういう性能を持っているか、衝突した時にどうなるかが分かるようになる。自動車各社がいま全力を挙げている「モデルベース開発(MBD)」の世界ですね。ただし、そのためにはシミュレーションのデータと実際の物理現象が一致しなければならない。

木谷:そう、でも、実車を路上で走らせても路面や天気、気温などの変数が多すぎるし精密なデータも取れない。なので、「多軸化ベンチ」や衝突実験装置などを使って、室内で模擬的にクルマの動きを再現・計測して、データとの整合性を確認していく。

そしてその装置はバカ高いし、すぐ壊れる、と。

木谷:でもこれがないと、デジタルとフィジカルの連結は画餅になる。だから、いろいろな領域でこの手の装置を20機前後入れて、総額で数百億円使った。

数百億円使っても、使い物にならない?!

ここまでが前回のお話ですね。マツダにとって、部門の投資としては大きすぎる。だけど、全社プロジェクトのMDIとして集中的にお金を回せたことで、部門の垣根を越えて一気に進めることができた。

木谷:そう。実物で試してモデルとコリレーション(変数の間の相関関係の強さを測定すること)を行う。これがなければ、本当に使い物になるCAEは生まれません、というお話です。

はい。

木谷:そして「よし、わかった」と数百億円を使っても、すぐ効果なんか出ないんです。

えっ、そうなんですか。