サイクロン掃除機など革新的な製品を生み出してきた英ダイソン。最近ではEV(電気自動車)への進出を表明して注目を集めるが、創業者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏から経営を託されているのがジム・ローウェンCEO(最高経営責任者)だ。
 日経ビジネスは3月28日、英ダイソンのジム・ローウェンCEOを招いた対話イベント「Raise Live」を開催。「デザイン×イノベーション」をテーマに、気鋭のデザインエンジニアであるTakramの田川欣哉代表との対談と、公募した日経ビジネス読者とのQ&Aセッションを実施した。
 その模様をお届けする動画レクチャーの第7回は、ダイソンの組織マネジメントについて。競合や価格を意識せず、自律的に動く組織はどのようなものなのか。

ラインアップ(全9回、水曜日掲載)
  • 01 全ては「課題解決」から始まる
  • 02 若者の「デザイン思考」が生命線
  • 03 過去の「履歴書」より未来を語れ
  • 04 ダイソンに「デザイナー」がいない理由
  • 05 若者には権限を与え、失敗させろ
  • 06 なぜダイソンの製品は一目で分かるのか
  • 07 競合も値段も意識しない
  • 08 “縦社会”をどう打破するか
  • 09 どうやって本質的な課題を発見するか
※今後の内容は変わることがあります
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競合についてはどのように考えていますか?

ジム・ローウェン氏(英ダイソンCEO=最高経営責任者):まず、ある販売価格に合わせたデザインをすることになったら、全く違うデザインになるでしょう。10ドルの製品を作るためのデザインか、あるいは問題解決のためのデザインか。コストに重きをおくか、問題解決のためにベストを尽くすか、もしくは、10ドルの製品を作るために問題解決で妥協するのか。だから私たちは、価格競争のことを考えないようにするのです。

 私は日本企業で働いたことはありませんが、上場企業ならあります。その経験から言うと、創業者が健在で事業に深く関わる非上場会社はとても有利です。より長期的で自由に物事を考えることが許されているからです。

 四半期業績も証券アナリストの意見も気にする必要がありません。むしろ私は、ジェームズが何を考えているかを気にします。ジェームズは、制約なく物事を考え、「最高の製品を一緒に作ろう」と言うでしょう。

 新製品の発表が迫っていても、改善できる点があれば、デザインを変えてしまいます。発売後に修正することもできますが、何カ月発売が遅れようと、私たちは発表をやめて修正します。このやり方はどんな会社にも通用するわけではありません。特に、上場企業はそうはいかないでしょう。

 それが、私たちに自由を与えてくれている大きな要因ですし、そして、それが企業文化を形作っているのです。

この先のポイント
  • ●ハードとソフトを融合するマネジメントのカギは?
  • ●ダイソンの開発部隊は自律的に動く

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