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 続いては「死神」。これも深い話です。特に短い落語、くだらない落語ほど、実はものすごく深いテーマが描かれている。この話を聞くと、より落語が好きになって、より日常生活が楽しくなります。テーマは、楽してもうけるなということになりますね。

 とにかくお金が欲しい、お金が欲しいと思っていたある貧乏な男が、死神に絡まれる。

死神:「お前、金がないだろう、医者になれよ」

男:「医者なんかになれるわけないよ。脈の取り方も分からないよ」

死神:「そうじゃないよ。病気を治せば立派な医者じゃないか。俺が今、呪文を教えるから、この呪文を唱えればいい」

 呪文の使い方は、病人の足元の方に死神が見えたら、呪文を唱えれば消える。枕元に見えたら、もう寿命だから手を出すな、というもの。

 実際に男がある病人の横で「何とか何とか」と呪文を唱えたら、足元にいた死神が消えて、たちどころに病気が治った。「この人は名医だ、さすがだ、天才医者だ」と大喜びされて、大金を手にする。

 楽してもうけちゃうと、行き着くのは酒と女になってしまうもの。この男も女でしくじって、一文無しになっちゃう。

 とはいえ、相変わらず医者の看板は出しています。「先生、お願いします」と患者から依頼が来るんですが、行ってみると、ほとんど死神が枕元にいる。

 「もうだめだ、ついてないな」と男が思っているとき、ものすごい大金持ちから何とか病気を治してくれという依頼が来る。行ってみると案の定、枕元に死神がいる。「ああ、やっぱりだめだ」と思ったのですが、「待てよ」と考えた。

 夜通しずっと踏ん張って、死神がうとうとしたときに、布団を半回転させて枕元と足元をがらり入れ替えれば、足元に死神がいることになる。その瞬間に死神に向かって呪文を唱えれば、死神は消えて、この病人は治るんじゃないか。

 これが無事、成功するんですよ。ただ、この成功が堕落の始まりなんですね。こうしたことによって、自分の寿命と、死にかけた大金持ちの寿命を取り替えてしまったのです。

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