続いての落語は「紺屋高尾」。これも人情噺(ばなし)の代表格ですね。「紺屋」は「こうや」、江戸弁ですね。

 これはどういう落語かというと、花の吉原の花魁(おいらん)のナンバーワン、AKB48でいうならセンターでしょうかね、高尾太夫という花魁に、紺屋六兵衛のところで働く染め物職人、久蔵が一方的にほれちゃうんですね。見た瞬間に恋に落ちた。

 真面目で遊びを知らない久蔵は、「どうしても会いたい、会いたい、添ってみたい」と思うんですが、下っ端の紺屋の職人ですから、ナンバーワンに会うことなどとてもできない。久蔵は恋患いで寝込んでしまう。

ナンバーワンが貧乏な職人にほれたのはなぜか

 そこで親方の六兵衛は「15両あれば会わせてやるぞ」と久蔵に言う。15両というのは当時の大金ですよ。

 さあ、こう言われた久蔵は、普通なら4、5年かかるところを、夜も寝ないで働いて、なんと15両を3年でこしらえる。吉原の世界に詳しいお医者さんに間に入ってもらって、何とか高尾太夫と会うことができた。そして一晩、共にした。「今度いつ来てくれますか」という高尾太夫の問い掛けに対して、「3年たったらまた来ます」と久蔵は言う。

 なぜそんなに長くかかるのかと問われ、久蔵は本当のことを言う。それまで、本当は貧乏な職人なのに、大金持ちだとうそをついていたんですが、うそをばらしちゃうんです。

 「すみません、うそをついていました。私は貧乏な職人です。あなたに会うためにはまた3年かけて、15両をこしらえなければ会うことができません。3年また頑張って会いに来ます」と、すべてぶちまけるわけです。

 これを聞いた高尾太夫は久蔵にほれてしまう。

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