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 「一眼国(いちがんこく)」という落語、これは本当に短いけれども、“哲学”じゃないかと思うぐらいに深い落語ですね。

 あらすじをかいつまんでお話しいたしますと、六部(ろくぶ)という諸国を旅することをなりわいにする人がいまして、見世物小屋を持っている男がこの六部に諸国の土産話を聞く。その中で、江戸から何百里という北の方に行くと、「一つ目の国」があって、そこは一つ目しかいないところだと聞き、よからぬことを企てる。

 師匠の立川談志は、落語というのは、人間の業の肯定だと定義しました。人間というものは、どうしようもないものだということですね。その論にのっとるように、どうしようもない人間たちがいるわけです。

 「一つ目の国に行って、『一つ目小僧』をさらってきて、見世物小屋に出せば大もうけできるな」と思い、一眼国を探しに行く。

 探しに行った先に「一つ目小僧」を見つける。「よかった、この子をさらって見世物小屋に出せば大もうけできるぞ、これで俺は億万長者だ」と、つかまえようとした。

 ところがなんと、この人が逆につかまえられてしまう。そしてこう言われる。「こいつは珍しい、二つ目をしている。見世物小屋に売り飛ばせ」

 すごい話だと思いませんか? 自分たちが抱いている価値観というのは、あくまでも自分たちのエリアでしか通用しないよ、ということを言っているわけです。

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