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 さあ、続いての落語は「道具屋」という落語でございます。

 この落語の主人公は与太郎。漢字で書きますとこう書きますね、「与太郎」。目を閉じて与太郎と言ってみてください。どう聞いても利口そうには聞こえない人物でございます。その通りで、いわゆる“ばか”の代表格で、間抜けなことを一手に引き受けたキャラクターでございます。

 ただ、この与太郎さんについて、私の師匠である立川談志は、「彼はばかじゃない」という歴史的な定義をしました。「非生産的なやつだ」と言ったんですね。

 与太郎さんが出てくる落語を「与太郎噺」と言いますけれども、代表的な落語にこの「道具屋」があります。道具屋とは今で言うフリーマーケットでしょうか。いんちきなものを道端に出して売る商売です。

 与太郎がいんちきなものを並べている中に1品、壊れた時計がありました。お客さんが、「おい、待てよ、こんな壊れた時計なんか買っても意味ないよ」と言ったら、与太郎がこう言い返すんです。

 「そんなことないよ、おじさん。壊れた時計でも、1日に2度は合うよ」。

 壊れた時計でも1日2度合う。一般の常識としては、壊れた時計には存在意義がないと思いがちです。ところが与太郎さんはそうじゃない。壊れた時計でも1日に2度合うと言う。