500例ほどの手術カルテを書類で提出?

宮田:成果が確認された後に、他分野の外科でも機運が高まり、NCDへつながっていくことになりました。その際、実効性を高めるために、専門医制度と絡めたことは効果的で、大きな進展につながりました。

瀬戸:その通りです。「専門医制度」とは、それぞれの学会が医師を審査・認定する仕組みのことで、これが医療の質を担保しています。ただこれはかつて、審査する側もされる側も、技術や経験、業績を証明する書類を用意することが非常に大変でした。

 例えば私が専門医になった時には、実績を示すものとして、500例ほどの手術カルテを提出し、審査を受けなければなりませんでした。

 そのためには、どういったことをしなければいけないか。

 多くの医師は、複数の病院で診療や手術をしますから、それぞれの病院で紙のカルテをコピーして、500症例分の資料を作って、とてつもなく分厚い紙の束を試験会場に持って行っていたんです。

 提出された資料は、今度は審査をする側が試験会場で一件ずつ調べていきます。正しく記載されているかどうかチェックして、記載漏れがあれば失格になってしまいます。

 すさまじい作業量でした。まあ、そうした労力をベースに専門医の質が担保されていたわけですが。

宮田:NCDが構築されて以降は、それがデータで処理できるようになりました。

瀬戸:そうです。現在はNCDのデータを引き出して、手術記録はウェブ上で事前に登録できるようになっています。

宮田:NCD登録術式によれば、この手術をいつ、どこで、何件やったのか、すぐに取り出すことができます。医師免許を得たときに振られる医籍番号を登録すれば、これまでに自分が施した手術のデータのすべてが瞬時に分かるようになっています。

瀬戸:NCDの元になる手術データの入力は、医師や当該医療機関がその都度、打ち込まなければいけません。これも手間といえば手間なので、NCD導入当初は「え、いちいちこんな打ち込みをしなければいけないの?」という反応もありました。

 けれど、自分たちが専門医資格を取るために必須のデータだということになれば、やらないわけにはいきません。

宮田:NCDは現在、約5000の医療施設が参加しており、そこで行なわれる手術症例の主要な手術の大多数を網羅するという高い悉皆性が実現されています。

 専門医制度と絡めたことが、現場への普及の大きな力となったのは間違いありませんね。