全2503文字

日本と米国、手術後の「30日死亡率」に大きな違い

 下の表は、左が米国の大規模医療施設、右が日本の医療施設の、ほぼ全数の臨床データです。膵頭十二指腸切除、膵臓低位前方切除、右半結腸切除の手術について、死亡率と術後在院日数を比較しています。

米国の施設日本の施設
膵頭十二指腸切除調査数5182例
30日死亡率2.57%
調査数1万5528例
30日死亡率1.35%
術後の入院日数合計9日(7-14日)31日(22-43日)
生存者9日(7-14日)31日(22-43日)
死亡者11日(6-17日)17日(15-24日)
膵臓低位前方切除調査数1万3989例
30日死亡率1.07%
調査数3万7161例
30日死亡率0.44%
術後の入院日数合計6日(4-8日)16日(12-25日)
生存者6日(4-8日)16日(12-25日)
死亡者6日(4-10日)10日(6-20日)
右半結腸切除調査数3万1571例
30日死亡率3.47%
調査数3万8740例
30日死亡率1.20%
術後の入院日数合計5日(4-7日)14日(10-20日)
生存者5日(4-7日)14日(10-20日)
死亡者8日(5-13日)15日(6.25-22日)

 日米の施設で「30日死亡率」を比べると、「米国対日本」が、それぞれ「2.57対1.35」、「1.07対0.44」、「3.47対1.20」。日本の死亡率は低く、手術レベルに遜色のないことが読み取れます(注意が必要なのは、日本は在院期間が長く、術後30日以内に亡くならなくとも、その後の入院期間中に亡くなるので、在院死亡はこの値の2倍ほどになります。米国と比較して圧倒的に優れているとは必ずしも言えません)。

 一方で、在院日数はどの施術の場合も、日本が軒並み約3倍に達しています。皆保険制度によって、誰もがきちんと入院できるということでもありますが、病院で過ごす時間が長くなる傾向にあるのはまちがいありません。

 この長さは果たして適切なのでしょうか。各方面の専門家とディスカッションを重ねたところ、入院日数については米国と日本の中間辺りが、医療の質としてベターではないか、という結果を得ました。

 米国では保険者(payer)からのプレッシャーによって退院が早まる傾向にあり、それにつれて再発・再入院率が高くなってしまいがちです。

 逆に日本は在院日数が少々長くなりすぎる傾向があり、「ADL(Activities of Daily Living)」と呼ばれる日常生活動作のレベルが下がってしまう。若い人でも30日も入院していれば足腰は弱くなりますから、高齢者の場合は、入院をきっかけに歩行が困難になるケースもあります。

 日本の患者さんは民間保険で入院費用がカバーされるため、入院期間が長くても本人にとってマイナスになるケースが少なく、患者さんはそれほど気にしません。病院側も在院日数削減の努力をしているのですが、ベッドを空けるより埋める方が経営にプラスになるため、制度でカバーできるギリギリまで入院を延ばすようなケースが多くなります。ただ特に後者の費用は税金でまかなわれるため、日本の医療費はトータルで膨れ上がることになります。

 最適な在院日数になっていけば、医療の質を改善した上でコストを大幅に削減できることとなります。ビッグデータを正しく活用して、医療における価値向上を実現していく。これからはあらゆる現場で、こうした「データヘルス」のあり方を常に模索していくべきなのです。

 では日本国内の臨床現場でNCDはどのように活用されているのでしょうか。連載5回目では、NCDを現場の臨床医の視点からリードし、ともに支えて下さっている、東京大学医学部附属病院の瀬戸泰之病院長のもとを訪れ、お話を聞きます。