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信頼性の高い巨大データベースで医療が進化

 現在、既に外科を中心として、全国5000以上の医療施設から手術症例が収集されており、信用性の高い巨大データベースが時事刻々と構築されています。

 確かに、以前からこの手の調査は行われていましたが、かつては「手間が掛かる割に、どう役に立つのか分からない」ものでした。せいぜい、いつか誰かの研究に反映されて、社会に還元されることもあるだろうと期待する程度。ところがICT(情報通信技術)の登場で、データを本格的に活用できるようになり、状況は一変しました。

 医療行為を受ける側は気づかないでしょうが、現在は、治療前に患者さんの情報を入力すると、ビッグデータからフィードバックを受けられるようになっています。

 それぞれの患者さんに、どういったリスクが予見されるのか。内科領域であれば、適応のある薬剤投与はどんな組み合わせなのか。実施してはいけない検査の有無は何か。そんな情報が即座に得られ、手術前のカンファレンスやインフォームドコンセントに、大いに活用されているのです。

 医療の臨床現場では、目指すべき指針としてEBM(Evidence-Based Medicine)というものがあります。患者さん個々の状態を勘案しながら、医学的知見や過去の症例、医療的実績に基づいて最適な治療を施すべきだという考えです。

 これまで、EBMを完璧に実施しようとすれば、診療ガイドラインを正確に記憶した上で、刻々と変わるエビデンスを英語論文で読み、学会にも出席して、自分自身を常にアップデートしていかなくてはいけませんでした。もちろん、プロフェッショナルとして不断の努力を日々重ねるべきであることは、言うまでもありません。けれど、個人のなせることにはどうしても限界があります。

 加えて、施設ごとの医療資源やマンパワーにも、当然ながら差はあります。

 先端の研究をしており設備も整っている病院もあれば、地域の医療を守るべくわずかな人員で臨床に当たっている小規模な施設もある。

 すべてで患者さん一人ひとりに最善の医療を提供することを真っ先に考えるならば、あらゆる臨床現場がビッグデータに基づくシステムにつながって、これを活用すべきなのは、自明でしょう。

 そうすれば、それぞれの臨床現場で、今ある環境の中での最善の治療は何か、ほかの病院に搬送した方がいいのかなど、エビデンスを踏まえたプロセスを、逐一提示できるようになります。

 現在の日本の医療現場では、NCDがその礎になっているわけです。

 臨床医療の分野では、既にビッグデータがかくも有効に使われ、サービス受益者の目には映らぬところで、質的向上に資する動きをしているのです。