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 「これからはあらゆるジャンル、シチュエーションで、ビッグデータをいかに活用していくかが、喫緊の課題として問われていくことになる」

 これが宮田裕章教授の基本認識である。医療における実践の様子を教えてもらおう。

 連載の1回目(「落日のニッポン、『データ駆動型社会』でよみがえるか」)では、私が提唱するデータ駆動型社会の全体像について紹介しました。

 連載3回目となる本記事では、私が関わっているプロジェクトの中でも、数多くの案件が動いている医療の分野から、取り組みの実例を見てみましょう。

 医療ヘルスケアの分野は世界全体が高齢化に向かう中で、米グーグルや米アップル、米アマゾン・ドット・コムといったグローバルIT企業までもが参入し始めた、多額の投資を集めている研究開発領域です。

 当然ながら、これまでもさまざまな事業体が医療データビジネスへの進出を狙ってきました。ですがいまだに成功例がなかなか出ないのが実情です。

 なぜでしょうか。

 大きな要因の一つは、医療分野においては情報の価値が外部から判断しづらいことがあります。例えばカルテに「合併症」と記述されたデータを集めようとしても、実は合併症の定義は、各医療従事者で統一されていないのが実際のところです。臨床の現場はあまりに多様、かつ外部からうかがいい知れない繊細な判断にあふれているのです。

 医療に身を置く側が、主体的にデータの収集・運用を担っていかなければいけないということになります。その試みは、既に始まっており、日本の臨床現場で欠かせぬ存在となっているのが、本連載でも先に触れたNCD(National Clinical Database)です(詳細は「全国5000病院がデータを提供、リアルタイムで医療を改善」)。