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 時代はこれから激変する――。
 そんな予感は誰しも抱く。「いや、既に大変化の真っ最中だ」と見る向きだってあろう。
 では来るべき次代とは、果たしてどんな姿をしているのか。
 データがあらゆるものごとのベースとなる、「データ駆動型」の社会である。
 そう見立てるのが、慶応大学医学部の宮田裕章教授だ。
 現状を鑑みるに、データ・ドリブン社会が加速していくのは間違いないとする。どういうことか。

 これは未来予測というより、既にそこにあるものを虚心に見れば導き出せることです。

 20世紀を振り返ってみましょう。社会のあらゆる面で、文字通り「動力」となっていたのは、燃料や原料としての石油でした。21世紀に入ると、状況が一変します。社会を動かす原動力は、物質を伴わないデータという存在に取って代わったのです。

 変遷をよく示しているのは、石油とデータのそれぞれを担う企業の時価総額です。

 世界の石油メジャーの時価総額は、長らくほかの分野を圧倒していましたが、2010年代に王座から陥落します。

 データを扱うメジャーであるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムという、いわゆる「GAFA」4社の時価総額が、石油メジャーの総額をあっさり抜き去りました。現在ではさらに、数倍の差がついてしまっています。

 データこそ「21世紀の石油」であることは明らかです。データを軸に様々な価値が生み出され、データが世界を駆動させる時代は、既に到来しているといっていいでしょう。

 この流れに、日本は乗り遅れてしまったというのが実情です。

 データ駆動型社会の中心的なプレーヤーは既に上位が固まっており、世界には3つの「極」ができています。「米国」「中国」、そして「EU(欧州連合)」です。

 米国では、先に挙げたGAFAが世界を席巻しているのはご承知の通り。その中でも成長著しいのはアマゾン・ドット・コムで、子会社のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で知られるクラウドビジネスの伸びによるものです。この分野で米国企業のシェアは圧倒的です。先を見据えての投資が功を奏した結果でしょう。

 中国は、国家と企業が一体となってビッグデータを徹底的に集め、活用し始めています。

 国家に情報を一元管理される危うさはありますが、注目すべきデータ活用法も芽吹いています。アリババ集団など巨大企業のサービスとして展開されている、「芝麻(ゴマ)信用」という社会信用スコアです。

 社会的にプラスとなる善行をするとポイントが付与され、逆ならば減らされる。個人の信用が可視化・共有され、ポイントの多寡が子どもの進学など個々人の生活に影響を及ぼす。貨幣より信用こそ価値を持つ社会が、ここから生まれそうです。

 EUでは2018年に、一般データ保護規則(GDPR=General Data Protection Regulation)が施行されました。個人のデータ保護を強化するルールをつくり、国家や巨大企業が保有していたデータを個人に取り戻そうというのです。

 市民一人ひとりが個人データのコントロール権を持つ「データポータビリティー」は、21世紀の基本的人権になると目されます。

 果たして日本はどうすればいいか。