会計の方から絵を見る取っかかりって、何かありますか。

田中:絵は苦手意識の固まりです。小学校1年生か2年生のとき写生大会で絵を描いたら、先生にぼろくそに言われて……。あれ以来、絵に対して心が閉じてしまったんですけど、たぶん似たような体験をした人って、すごく多いと思うんです。会計もよく似ていて、最初に簿記をやらせるからみんな嫌いになっちゃうんですよ。実技から入るからです。

山本:本当、まさにそうです。

田中:そこで大嫌いになると、二度と“帰らぬ人”になってしまう。そうではなく、最初は決算書の読み方から入る。興味を持った会社の決算書の読み方を教えてもらえたら、会計の世界に引きこまれますよね。そこから決算書をつくる方に行けば何の問題もないと思うんです。

山本:先生のおっしゃる通りだと思う。必ずしもアーティストが、目が利くとは限りません。みなさん、アーティストは絵が分かると思っているでしょう。でも、必ずしもアーティストが絵が分かるわけではないんです。天才といわれるアーティストは、見る力と作る力が拮抗している人です。作品には、ここでやめておいた方がいいという場所があるんです。それは見る力。ところが見る力がないと、やり過ぎて作品がつまらなくなってしまう。

 たぶん戦後教育の中に、技術中心主義が入ってしまって、物を作ることで物を見ることができると勘違いしたんです。

簿記ができなくても数字が読めれば社長はできる

田中:その理屈って経理で簿記をやっていないと、社長はできないと言っているのと同じですよね。別に簿記ができなくたって、数字が読めれば社長になれる。それなのに、どうも経理の作業的な部分が強調され過ぎてしまっている。

山本:そうですね。僕はたまたま国会議員の秘書を辞めて父親に「お前暇にしているなら画廊に来い」と言われたので画廊に入り、「お前、時間が余っているなら銀行の人のアドバイスを聞いて簿記をやれ」と言われたので簿記を始めました。そのときは美術商になる自覚はまだなかったから。

 ところが、試算表をつくると、結構面白いんです。1円まできちんと合うと、銀行の人が、「ああ、山本君、よかったね、今期は2時間で試算表ができたね」と言う。すると達成感があって(笑)。簿記は分からないんだけど、試算表自体の面白さはそこで知りました。

(後編に続く。掲載は8月14日の予定です)

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