山本:次に、日本人はなぜ印象派が好きなのかという話を一番分かりやすくお話してみましょう。印象派のアーティストたちは日本の浮世絵から影響を受けました。

「ゴッホ自画像」(アムステルダム国立美術館、撮影:田中靖浩氏)
「ゴッホ自画像」(アムステルダム国立美術館、撮影:田中靖浩氏)

日本人が印象派を大事に思う理由

 人間は物を見るとき、自己投影が大事なんです。よく公園で犬を連れている人を見ると、飼い主と犬が似ている例が多い。それは犬に自分を見て似たものを飼うからです。このように自己投影は自分が物を見るとき必ず原点になっている。印象派は浮世絵から影響を受けているから、僕たちは西洋絵画を見ていると思っているけど、浮世絵の影も見ている部分があるのです。

田中:懐かしさを感じるんですね。

山本:そうなんです。僕は美しいという概念は2つの構造でできているといつも言っています。それは「懐かしい」と「珍しい」です。僕たちは珍しいものを見たときは、これは何なんだろうと思うのですが、これは時間とともに懐かしさに変わります。だから、前衛も懐かしくなると価値が出る。でも最初に見たときは、「何だこれ」と言われるものだから、価値は出ない。

田中:懐かしくないのですね。

山本:そう。僕たちは印象派を見ることによって懐かしさが触発されるから印象派が大事なものとなる。でも、韓国の人や中国の人は、あんまり印象派のことを騒ぎません。

田中:そう言われればそうですよね。

山本:日本人だけでしょう、印象派展でいまだに列をつくっているのは。韓国は、アメリカの現代美術なんですよ。

田中:そうなんですか。

山本:韓国の財閥系などある階層は、教育はアメリカで受けている人が多いでしょう。学生時代にアメリカ文化に触れると、そっちに行くわけですよね。日本でアメリカ文化に触れたのは、「VAN」ジャケット以降でしょう。銀座もそこで分かれるんです。パリの影響を受けた文化と、アメリカの影響を受けた文化がみゆき通りで分かれるんです。

次ページ 簿記ができなくても数字が読めれば社長はできる