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田中:いくら払うかをコストとしてだけ捉えるのではなく、投資としていくらリターンを生むか、その兼ね合いを見なければいけません。会計は、コストでしか見られないんですよね。

 このエピソードから分かることは、数字には過去と未来があるということです。会計は基本的に過去ばかり見ている。ただ、マネジメントにおいて重要なのは未来です。未来がもっとも重要になるのが、企業買収です。買収価格は今のバランスシートで決まるものではなく、将来どれだけ稼ぐかで決まります。それを理論的に補強してくれたのがファイナンスという学問なんです。従来の会計では出てこなかった考え方です。

「のれん」とは何か

田中:最近では、M&Aに関連して「のれん」という言葉を聞きませんか。

白井:はい、よく聞きます。

田中:「のれん300億円」とかいいますが、なぜ、のれんが300億円もするのか、分かりませんよね。

白井:分からないですね。

田中:まるで、ダイヤモンド製ののれんみたいな感じです。のれんは、営業権という意味なんです。英語で「goodwill=グッドウィル」、営業権という意味で、超過収益力などと訳します。

 基本的に買収は、相手の会社のバランスシートを買うことになりますが、バランスシートの金額だけで買収価格は決まらないんです。買収価格は、基本的にはその会社を買うことによって、その会社が将来いくら稼ぐかの「読み」によって決めます。これは「マイケル的発想」ですよね。

 将来、買収した会社から得られるであろうリターンが「将来キャッシュフロー」です。買収の際は、この将来キャッシュフローを見積もって、買うか買わないか決めます。

 図のように、のれんと買収する会社の資産の合計が、買収金額です。

 バランスシートの資産は大したものではないけれども、ノウハウを持っていたり、経営者にカリスマ性があったりしてよく稼いでいる会社もあります。バランスシートの純資産の金額より多額の金が買収にかかることがあります。この差額が、のれんなのです。

白井:なるほど。分かりやすいですね。