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 管理会計の有名ツールといえば予算。この予算の考え方が一般化したのは、今から約100年前であることは意外と知られていません。シカゴ大学で会計学を教えるジェームズ・マッキンゼー教授が「管理会計(Managerial Accounting=マネジリアル・アカウンティング)」の講座をスタートしたのが始まりです(動画は以下で無料でご覧いただけます)。

田中靖浩(公認会計士):今回は管理会計の有名ツール、予算について説明しようと思います。予算の歴史は何年かというと、100年なんです。

白井咲貴(日経ビジネス):そうなんですね。

田中:シカゴ大学で会計学を教えるジェームズ・マッキンゼー教授が100年前に「管理会計(Management Accounting=マネジメント・アカウンティング)」、正確には「Managerial Accounting=マネジリアル・アカウンティング」という名前の講座を、1920年からスタートしたというところから始まっています。

 ここを基点と考えると、管理会計の歴史は100年なんです。ではなぜ1920年、シカゴから始まったのかです。

白井:何ででしょうか?

田中:鉄道がアメリカで引かれて都市ができ、大量生産が始まったのが19世紀だったことは前回お話ししましたね(「いかに効率よく働かせるか、原価計算と管理会計の誕生」)。

 20世紀に入って、第1次世界大戦と第2次世界大戦がありましたが、アメリカはどちらの戦争でも自国のほとんどは戦場になっていません。また、どちらの戦争でも勝った側に入っているんです。戦後、多額の資金をヨーロッパに提供して債権国になっていくプロセスで、戦争特需もありましたし、兵器を軍需用に提供することもありました。ここで技術革新が起き、メーカーはすごくもうかりました。また、技術は後に生きてきます。

 T型フォードができたのが、20世紀に入ってすぐです。フォード・モーターが車を造り始めたところで第1次世界大戦が起きました。フォードはトラクターや飛行機のエンジンを提供するなど、戦争との絡みでもうかりました。フォード自身は戦争に自分の製品を提供するのを嫌がったみたいですけどね。

 戦争による特需でもうかったのはいいんですが、逆にその反動で需要が減少する。アメリカの場合、需要の急変に耐えうる会社だけが残りました。この波を乗り切ったのがフォードという代表的な会社です。

 フォードが車を造り始めたときは、まだアメリカ人は車を持っていません。また、最初は高くて買える人は少なかった。値段がどんどん安くなって市民に普及してくると、すごく売れるのでたくさん造ったのですが、それが在庫になってしまう。こうした需要の急変にフォードも悩みました。成り行きで利益が出るのではなく、あらかじめ計画を立て、その数字を経営の役に立てることはできないのかと考えた。そこに出てきたのが、予算管理システムです。もうかっていて、かつ需要が急変するような環境下で成立した経営ツールといえます。

 これを教えたのが、シカゴ大学の会計教授、マッキンゼーです。そうなると、経営者や経営者の卵は勉強しに来ますよ。株主や投資家のために業績報告をして終わりではなく、内部管理用のツールを使いましょうというのは、経営者にとってはとても魅力的なメッセージですから。

白井:そうですよね。

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